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過敏性腸症候群(IBS)

2020年03月27日

消化器内科

過敏性腸症候群とは英語でIBS(Irritable Bowel Syndrome)と訳されています。

irritableを過敏性と訳したわけですが、irritable は元来イライラして怒っている様子を表しますから、「怒れる腸症候群」というのが本来のイメージです。

明らかな原因の心当たりもなく、また検査をしても炎症や腫瘍などの原因がないのに、勝手に腸が怒ったように下痢をしたり便秘をしたりを繰り返してお腹が痛くなる、そんなイメージの疾患です。

 

お腹の調子が良い時もあるのですが、少なくとも平均して週に1回以上腹痛や腹部不快感があり、その症状が便の性状(下痢便なのか、コロコロの硬い便なのか)の変化を伴い、排便頻度の変化(便秘なのか、下痢なのか)も伴うもの。

そしてその腹部違和感や腹痛が排便と関連するものをIBSと診断します。

下痢型と便秘型と混合型、そして分類不能型の4つのタイプに分かれます。

 

日本人の約20%がIBSであると言われています。

かなり多くの方がIBSで悩まれていて、症状の程度は個人差が非常に大きく、仕事や生活に全く支障がない人もいれば、生活そのものが排便の悩みで立ち行かなくなる人もいます。

医療機関を受診する方の多くは症状の強い方で、そのような人々は本当に苦しい思いをされていますが、周囲に理解されづらいところがあります。

生活がお腹の調子に支配され、しかも周りの人には理解されないわけですから、これはつらいです。

 

IBSの原因はまだ判明しておらず、一過性の炎症による腸内フローラの変化や、脳と腸の伝達において異常をきたす遺伝子的な変異などの仮説があります。

また大腸の形態が原因になったり、食後の胆汁分泌に大腸が過剰に反応を示すことが原因となることもあります。

つまり体質的なものが大きく関与しているわけです。

 

そしてこの体質的なものに症状を引き起こすきっかけとなるのが、多くの場合ストレスになります。

緊張感や不安感といったものは、腸の収縮運動を活発にするのが正常な機能で、IBSの人はこの消化運動の変化がより大きく、そして大腸の知覚も大きいため痛みを感じやすく、つまりそのような体質なわけです。

この体質による症状、腹痛や便秘、下痢などは思春期くらいから出始めることが多く、加齢とともに症状が軽くなっていく人も多いと言われています。

 

そのような体質の人が全員発症するわけではなく、きっかけはストレスによる心への負担で症状が出ます。

腹痛を伴う便秘や下痢の症状はきついもので、そしていつどこでもトイレに行けるわけではないので、外出がきつくなり、外出に対して恐怖感が生まれます。

すると外出することが心にとってストレスと認識されるため、外出しようとすると大腸の収縮運動が盛んになり症状が出ます。

学校でお腹が痛くなったらどうしよう、会社でお腹が痛くなったらどうしようと思うようになるのは自然なことです。

そしていずれはお腹がいつ痛くなるのか、いつ下痢になるのか、便がまたでなくなったらどうしようと、いつもお腹の事、排便のことに気持ちが向いてしまいます。

この悪循環で腸管の働きが悪くなり、四六時中お腹の調子が悪くなってしまうのです。

 

大腸の形態が原因になることもあり、大腸の走行が複雑で曲がりくねっていたりねじれていたりすれば、そこで便の停滞時間が長くなり腸管がそれに対して過剰に運動をして下痢をしたり、水分の過吸収や吸収障害を起こして便秘や下痢になったりします。

 

IBSの診断にはまず大腸の検査をおこなって、他の疾患がないことを確認する必要があり、異常がない場合に限り症状からIBSを診断するわけです。

炎症性症疾患や大腸がんなどがないことを確認したら以下の定義に従って診断します。

IBSの定義

反復する腹痛が、平均して週に1日以上存在して、しかもそれらの症状が以下の3つのうち2つ以上を伴うこと。

①症状が排便により軽快する。

②症状の発現が排便頻度の変化を伴う。

③症状の発現が便性状の変化を伴う。

少しわかりづらいですね……

簡単にいうと、平均して週に1日以上、お腹の痛みがあって下痢や便秘の症状が排便で楽になるようであればIBSと診断されるわけです。

情動性変化やストレスで病状が悪化することは診断基準には入っていません。

ここのところがよく誤解されており、医療従事者でさえもIBSとは「精神的に下痢をしたり便秘をしたりする人」だと認識している人もいるほどです。

 

そしてIBSと診断されると、症状から3つのタイプと分類不能型に分けられます。

IBSの3つのタイプ

① 下痢型 軟便や水様便が25%以上あり、硬い便やコロコロの便が25%未満

② 便秘型 硬い便や兎糞状の便が25%以上あり、軟便や水様便が25%未満

③ 混合型 硬い便や兎糞状の便が25%以上あり、軟便や水様便も25%以上

上記では分類できないものを分類不能型とします。

このタイプ分類をまず行い、その他にストレスや情動性変化に症状が大きくかかわっているのかどうか、腸管の形態に問題はないか、腹痛と食事に関係はないかどうかなども診察時の問診で確認していきます。

またIBSの人は逆流性食道炎の症状や吐き気、膨満感、げっぷやおならが多いなどの症状を伴うことも多く、それらも丁寧に確認していく必要があります。診断してタイプを分類したら治療になります。

 

お薬による治療にすぐに入る前に、まずは生活習慣の改善が重要で、食事は三食きちんと規則正しく摂り、食事の際にはゆっくりと時間をかけてよく噛んで食べるようにしましょう。

睡眠も大事で、早めに布団に入り、少し早めに起きるようにしましょう。

朝学校や仕事に行く前にゆとりを持てることが大事で、できれば1本早めの電車やバスに乗ることをお勧めします。

それだけでずいぶん気分的に楽になります。

下痢型の人はアルコールを極力避け、脂質の摂りすぎもよくありません。便秘型で特に腸管が長い方や走行が複雑な方は、運動やマッサージも有効で、腸管を支え、排便を促すのには内在筋も必要になりますので、体幹の筋力トレーニングも有効です。

 

お薬の治療は、その症状に合わせて薬を選択していきます。

しかし内服しても生活習慣を改善しても症状が良くならない場合があります。

長い期間病気で悩んでいる方や、症状がつよく生活に支障が出ている場合、学校や仕事で明らかにストレスを受けている場合などは、かなり深刻な状況になっていることが多く、なかなか消化器の薬に反応しません。

内服の効果がないために検査を再度行って、また薬を出されるけど効かなくて、だから病院を変えて… このような悪循環に陥っていることも多いのです。

 

何がストレスなのかを見極め、場合により学校や仕事を休むことも必要です。

排便は生きる上で非常に重要なことで、便通異常があると生活が脅かされます。

そのこと自体がひどいストレスとなってさらに病状を悪化させます。

そのような場合SSRIなどの抗うつ剤が有効なことがあります。

 

どこに行ってもよくならないIBSでお悩みの人はぜひ当院にご相談ください。一緒にIBSを治していきましょう。

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