横浜つづきクリニック

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クリニックブログ

胃がん

2020年06月02日

消化器内科

消化管というのは口から肛門に至る1本の管で、食道の出口から十二指腸の入り口までの袋状の器官が胃です。
最も大きな機能は消化機能で、食べたものは食道を通って胃の中に入ります。
胃の出口は直径10㎜ほどしかありませんので、しばらく食べ物を胃袋にためて充分に消化してから出口を通して十二指腸に運びます。

胃の入り口付近のことを噴門と言い、また出口付近が幽門です、真ん中を胃体部と呼びます。
胃の壁は層構造をしていて、胃の内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜の大きく分けて4層の構造をしています。

胃がんとは胃の上皮(4層のうちの粘膜側)にできた悪性腫瘍のことで、粘膜にできた悪性の腫瘍であるがん細胞が秩序なく増殖していきます。
がん細胞は粘膜から徐々に深い層、深層に入り込んでいき、粘膜下層までにとどまるがんが早期がんで、筋層より先に入り込んだがんを進行がんと言います。(がん細胞の進み方の深さの問題だけですので、進行がんは末期がんではありません)
がん細胞が4層目の漿膜を超えて進むと周囲の臓器に食いついていき、これを浸潤と言います。
また無秩序に増殖していくがん細胞がリンパに乗って流れてリンパ節転移を起こし、血流によって流れて肝臓や肺などの他の臓器に転移していきます。

長年胃がんは日本では発症率も死亡率も最も多いがんでしたが、ピロリ菌の除菌療法の確立とともに胃がんは減少してきています。

がん細胞には組織の型があり、胃がんのほとんどは腺がんというがんです。
がんには正常組織とがん組織がはっきりと分かれている分化型がんと、周囲組織と境界が不明瞭な未分化がんがあります。
未分化がんの方が転移や浸潤をしやすくなります。

治療は原則的に切除、つまり外科的にがんのできている部分の胃を切って取り除きます。
がんが粘膜内に留まっている分化型がんであれば内視鏡にて切除できるものもあります。

ですから胃がんの場合は早期発見が重要で、またピロリ菌と胃がんは大きく関連しているため、ピロリ菌感染の有無を調べて、感染している人はピロリ菌を除菌することにより胃がんを予防することも大切です。

胃がんの原因は長期にわたる慢性的な炎症が、徐々に上皮化生と呼ばれる状態になり、そこから細胞の異形成がでてきて線細胞が乱れていき、抑制する遺伝子にも傷がつくようになって上皮ががん細胞に変わっていきます。
要するに慢性的な炎症が良くないわけで、慢性的な炎症を起こす最も大きなものがピロリ菌感染による萎縮性胃炎です。

ピロリ菌は免疫力の弱い幼少時に感染することが多く、そのころから長年にわたり胃に炎症を起こしていきます。
そして60歳を超えるころには胃がんになってしまうわけです。
ピロリ菌感染の他、喫煙や塩分の多いものなどが長期の炎症を起こし原因になりますが、やはり圧倒的に原因として大きなものがピロリ菌感染です。

胃がんは遺伝性の疾患ではありませんが、同じ生育環境という意味で家族性はあります。
ご兄弟に胃がんの方がいる場合は胃の検査をしておいた方がよいでしょう。
同様にピロリ菌の検査もしておいた方が良いと言えます。

胃がんそのものには症状がありません。
潰瘍性の形をとる場合は胃の痛みが出ることもありますが、基本的には無症状が多く、早期胃がんには全く症状が出ません。
胃がんが進行して出血するようになれば便が黒くなり、血液と便が混じって黒い便となって排便されます。
じわじわと出血することが多いので、徐々に貧血になり、貧血症状が初発症状になることも多く見られます。
貧血により息切れやふらつきなどの症状です。

胃がんが大きなものであれば、お腹から腫瘍を直接触れることもあります。
胃がんが進行して神経叢まで浸潤すれば、激しい痛みが出ることもあります。

いずれにしても胃がんで症状が出てくるのは、かなり進行してからになります。
症状が出ているから手遅れということは決してありませんが、症状が出る前に発見することが大切です。
定期的に胃の検査を行うことと、ピロリ菌の感染の有無を調べて感染していれば除菌してピロリ菌を退治しておくことも大切です。

胃がんにはステージがあります。
肉眼的に0型から5型までに分類され、0型は表在型で早期がんになります。1型から5型までは進行がんになります。

0型は更に、0-I型(隆起型)、0-IIa型(表面隆起)、0-IIb型(表面平坦型)、0-IIc型(表面陥凹型)、0-III型(陥凹型)に分かれます。

進行がんは1型(腫瘤型)、2型(潰瘍限局型)、3型(潰瘍浸潤型)、4型(びまん浸潤型)、5型(分類不能型)の5つの型に分類されます。

胃がんのステージには、がんの深達度(深さ)と転移の有無により分類になり、内視鏡により肉眼的分類を行うことにより深達度はある程度診断できます。
内視鏡の他に超音波検査や腹部CTを行いがんの転移の有無を確認してステージ分類します。

最終的にはがんのある部分の胃を切除して、顕微鏡の検査を行って病理分類を行います。
これが最終診断となり、診断のステージに従って、手術の後に補助療法として抗がん剤を使用するかどうかを決定していきます。

胃がんの診断は病理検査によって確定します。
病理検査とは細胞の一部を採取して顕微鏡で行う検査のことで、組織を一部採取する必要がありますから、内視鏡(胃カメラ)による検査が必ず必要になります。

内視鏡を行うと、進行がんは一目瞭然で、発見したら組織を採取して確定診断となります。
問題となるのは肉眼的に分かりにくい早期胃がんや潰瘍との鑑別(胃がんではないものを除外していくこと)になります。
潰瘍がある場合は基本的に組織生検をして顕微鏡の検査を行います。
またピロリ菌に感染している、あるいはしていた人の、上皮化生の強い、いわゆる凸凹した粘膜を持つ胃は細心の注意を払って確認していき、少しでも怪しいところは組織を採取(生検)して顕微鏡の検査を行います。

内視鏡にて胃がんを疑った場合は上述の肉眼的分類を行い、そして組織検査にて胃がんの診断が確定したら臨床ステージを決定します。
臨床ステージには転移の有無の確認が必要ですので、腹部超音波検査や腹部CT、胸部レントゲン撮影や胸部CTなどをおこなって、多臓器転移やリンパ節転移の有無を確認していきます。

以上から内視鏡の検査は非常に重要な検査になります。
また胃がんの場合は早期に発見できるかどうかが予後の決め手になります。
定期的に内視鏡を受けるということが推奨され、内視鏡を受ければピロリ菌の検査が保険適応になります。
内視鏡所見でピロリ菌感染を疑われる場合はピロリ菌の検査も行い、陽性であればピロリ菌の除菌治療を行うことにより胃がん発生のリスクを大幅に軽減させることができます。

重要なことが分かっていても、胃カメラが苦しいイメージを持っているため、躊躇される方もたくさんいるかともいます。
当院では苦痛を軽減させることに真剣に取り組んだ内視鏡を行っており、安心して内視鏡を受けて胃がんを防ぎましょう。

胃がんが早期のもので転移がなく、粘膜内に留まっており、かつ前述した分化型のがんである場合、内視鏡手術の適応となります。
内視鏡で先に針のついた道具を使ってがんの下に水を入れ、がんの部分を筋層から持ち上げます。持ち上げたがんに金属のワイヤをかけて熱で焼き切ります。
これをEMR(内視鏡的粘膜切除)と言い、大きながんは、病変を持ち上げた後に少しずつ粘膜の下の層で切り取っていくESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という方法をとれば、かなりの大きさのものまで切除可能です。
これらの内視鏡治療は入院して行う内視鏡手術になります。
切除したがんを顕微鏡で調べて、リンパ節転移の可能性がなければ治療はそれで終了となります。
リンパ節転移の可能性が高ければ外科的治療へと進みます。

胃がんのことを考えるとき大事なのは早期発見とピロリ菌の除菌です。
定期的に内視鏡(胃カメラ)の検査を受けていき、ピロリ菌感染が確認されたら除菌していきましょう。

胃がんは決して不治の病ではありません。
きちんと診断してきちんと治療をすれば完治する人もたくさんいます。
それには早期に見つけることが本当に大事なのです。

皆さんもどうか、定期的に内視鏡の検査を受けてください。少なくとも私と出会った人から胃がんで亡くなる人は一人も出したくありません。

安心して苦痛なく検査が受けられる環境は、しっかりと準備してあります。

 

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