横浜つづきクリニック

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クリニックブログ

レイモンド・チャンドラー

2020年03月07日

院長の日常

一番好きな作家は?と聞かれると、いつも困ってしまいます。

作家だけに限らず、一番好きな映画や、一番好きな俳優、一番好きな曲など、どうも一番というものを決められないようです。

好きなものはたくさんあります。

嫌いなものより圧倒的に多くあって、その中で一番を決めることなど到底できません。

 

僕は好きな作家の作品は何度も読みます。

一度しか読んでいない本でも大好きなものはたくさんありますが、何度も読んだ本としてはレイモンド・チャンドラーの本が挙げられます。

基本的には長編が好きなのですが、チャンドラーの長編で1度しか読んでいないものはありません。

すべて2回以上読んでいます。

前にも書きましたが「The Long Goodbye」は5回読んでいます。

フィリップ・マーロウは本当に好きで、その生き様にほれ込んでいるほどです。

でも、なんといってもチャンドラーの魅力はその文章です。チャンドラーを読んだ後は、文章も影響されますし、頭の中の思考までチャンドラー風になってしまいます。

 

というわけで、今回の文章はここから以下をチャンドラー風にしてみたいと思います。

ハードボイル風に読んでみてください。

 

遠くから声が聞こえた。

遠いうえに、その言葉は火星語か金星語に聞こえた。

全く何を言っているのか理解ができなかったが、徐々に聞きなれた地球の言葉になっていった。

どうも子供の声だ。

誰かに話しかけているらしい。

今何時なのだろう。

瞼を開けようと努力するが、寝ている間に誰かが上の瞼と下の瞼を糸で縫い付けたらしく、全く目が開けられなかった。

頭も重い。

頭と耳がやけに大きく、オレンジ色の三角帽子をかぶった小人が夜中にやってきて、大きくて硬いスパナで頭を思い切りたたいていったようだ。

きっと瞼を縫い付けていったのもそいつだろう。

しかしなんだってよりによってオレンジ色の三角帽子なのだ。

せめて落ち着いた色の毛糸の帽子であれば、あの目障りな大きな耳を隠せたのに。

ラップ音楽に合わせて阿波踊りを踊るほどの努力をして、何とか上の瞼と下の瞼を引っぺがして時計を見ると、時刻は7時だった。

そして遠くで地球の言葉を話していた子供は、隣で寝ていた私の次男だった。

その隣で寝ている自分の母親に話しかけていたのだ。

徐々に頭の中に漂っていた靄が晴れていくと、今日が日曜日であることを思い出した。

夜中に小人が頭をたたいていったのではなく、頭が重いのは単なる寝不足であることも、徐々に思い出した。

 

何とか身体を起こし、洗面台に行って冷たい水で顔を洗い、もう二度と使わないという100万回目の誓いを破って電気シェーバーでひげをそると、ようやく人間らしい顔になってきた。

重い体を引きずるようにして部屋に戻ると、息子がテレビジョンの前で待っていた。

そして顔に大きな笑みを浮かべてこう言った。

「パパ、マリオカートやろうよ!」

…すいません。

調子に乗りました。

字数ばかり使用して話が進んでいませんでした。

まあ、チャンドラーを読んだ後は、こんな風に自分の行動に頭の中で注釈をつけていってしまうのです。

そして寝る前にはバーボンをロックで飲み、コーヒーにはわずかにウィスキーを入れたりします。

氷がたてる音を楽しみ、音楽も50年代のジャズを聴いて無口になってみたりします。

チャンドラーを読んでいると、その世界に引き込まれるので、自分の世界までが、なんとなく変わってしまうのです。

 

チャンドラーはハードボイルドもののミステリーになるわけですが、その文章は純文学にも匹敵するほど卓越していて、初めて読んだときは本当に驚きました。

他のミステリーが幼稚に感じたほどです。

あのように、読んでいる間にその世界に引き込んでいってくれる作家は本当に凄いと思います。

そしてあの魅力的な主人公、フィリップ・マーロウ。

僕の頭の中でのマーロウはハンフリー・ボガードでもロバート・ミッチャムでもなく、僕の想像の中だけで固定され画一された人物像があり、そのマーロウが、本を読んでいる間中生き生きと活躍します。

基本的に一人称のみの文体ですから、マーロウは出ずっぱりです。

その僕の想像するマーロウは、格好よく、渋く、そして人間臭く、優しいのです。

セリフの一つ一つ、作中の語りの一つ一つが本当におしゃれでうなってしまいます。

(先ほどの僕の文章は忘れてください。似ても似つかないので…)

 

初めてマーロウに出会ったのは大学生の時です。

他のハードボイルド作家の作品も面白いのかと思って何冊も読んでみました。

みな面白くはあったのですが、チャンドラーを読んだ時のような気分は味わえなかったし、マーロウほどの人物には会えませんでした。

その後も数回読んではいましたが、40代の後半にすべての長編を読み返しました。

 

「The Long Goodbye」と「The Big Sleep」は原文も読みました。

(訳さずに雰囲気だけ。英語は苦手なので)

訳本は村上春樹役で読み直しました。

何度も読んだつもりだったけど結構忘れていて、新鮮な気持ちで読み直せました。

やっぱり素敵な作品たちでした。

初めて読んだ時から30年ほどが経っていることになります。

前に読んだ時マーロウは自分より年上で、今は年下になっているのかと思うと不思議な感じがしました。

また時間が出来たらゆっくりと読み直していきたいと思います。

それって、ものすごく贅沢な時間だと思いませんか?

レイモンド・チャンドラー

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