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横浜つづきクリニック
-内視鏡内科 心療内科 内科-
2020年03月09日
心療内科
前回に引き続き略語シリーズです。
HSPとはHighly Sensitive Personの頭文字をとったものです。
人一倍敏感な人とか繊細な人と訳され、非常に感受性の強く敏感な気質の人のことです。
ちなみにHSPの子供をHSCと言います。アメリカのエレイン・アーロン博士が1991年に研究を始め名前を付けられたものです。
HSPは病気ではなく、生まれついての気質です。
病気ではありませんが、私の外来に来院される抑うつや適応障害の患者様たちの中にはHSPの方々が少なからずいらっしゃいます。
つまりHSPの方々はその特性のため生きづらさを感じている方が多いのです。
HSPの方々ってどのような方々なのでしょうか。
アーロン博士によると、その特性はまず、考え方が複雑で、深く考えてからでないと行動できません。
一つのことからたくさんのことを想像してしまうために、物事を始めるまでに期間がかかってしまいます。
そして刺激に敏感でとても疲れやすいので、人混みや大きな音、まぶしい光などが苦手です。
些細な言葉にも傷つき、しかもなかなか忘れられません。
物事に大げさなほどに驚いたり、感動したりします。
また、人の気持ちにすぐに共感してしまうために振り回されやすいのも特性です。
人が怒られていると、自分が怒られているような気分になってしまったり、人の気持ちの些細なサインを見逃さず、機嫌を深読みしてしまいます。
最後に感覚の鋭さが挙げられます。
音にも光にもにおいにも敏感で、肌の感覚も敏感です。
鋭すぎて気分が悪くなってしまうほどです。
つまり刺激に対して敏感で、自分の中のことも外のことも感じる力が強いのです。
感じる力は強いのですが、刺激の閾値は高いわけではないので、容易に許容量を超えてしまうのです。
だからとても疲れます。
想像してみてください。
まぶしすぎる光の中で騒音と感じるほどの音が鳴り、しかも隣ではずっと気に障ることを激しく行っている人がいるところを。
誰だってへとへとになります。
HSPの方々はそんな中で生活しているようなものなのです。
しかも周りからは、「細かすぎる」だの、「気にしすぎ」だの「打たれ弱い」だのと言われるので、「なんで私って、こうなんだろう。なんでみんなが普通にしていることが普通にできないんだろう」と自己評価を下げてしまいます。
もともと物事を深く考えすぎる特性を持っていますから、自己評価を下げ始めるとネガティブな感情にとらわれてしまい、うつや適応障害を発症しやすくなってしまいます。
HSPの方々は何にでもよく気が付いてしまい、しかも放っておくことができません。
しかも良心的でまじめな方が多いので、中途半端な仕事もできません。
ですから、どうしても仕事の効率が悪くなります。
そのうえ頼まれた仕事を断ることも苦手なので、損な役割を負わされてしまいます。
そして周囲に機嫌の悪い人がいると緊張するし、怒られている人のことまで気になってしまう。
それでも頑張り屋さんが多いので、頑張ります。
息を切らして歯を食いしばって、頑張って、頑張って… 気が付いた時には体に鉛を背負ったような重みを感じて、思うように動けなくなっています。
あるいは朝仕事の支度をしなくてはならないのに布団から出られません。
理由もないのに涙が出てきて止まらなくなったりもします。
そんな時は、身体だけではなく、心が疲れているのです。
少し休みましょう。
心身のために休憩も必要です。
時には逃げ出すことも必要なのです。
HSPの方々は、その特性を知って生活することが大切です。
HSPではない人には、HSPの方々のことを理解することはできません。
相談したところで理解してもらえずに更に自己評価を下げてしまうだけになってしまいます。
自分の特性を知って人と付き合い、仕事を選び、仕事をしていくことが大切なのです。
HSPの方々は気持ちを汲むことが得意です。
気遣いが得意で、繊細な対応ができます。
しかし相手にも同じような気遣いができるとは限りません。
自分とは違うのだなということを理解して過度な期待はせず、そしてなんでも言葉にしてよく話をしていくことが大切です。
人に頼まれると断れず、何かを人に頼むのも苦手ですから、小さなことから頼んだり、断ったりする練習をしていきましょう。
仕事に関していえば、効率が悪かったり、複数のことを同時にできなかったりしますが、その原因は人の頼みを断れないからですし、複数のことを同時にすることよりも一つのことを丁寧に深く考えながら行う方が得意なのです。
一つの仕事に対して、いろいろなことに気づいてしまい、すべてのリスクに対して対処していくために効率が悪いように感じてしまいますが、当然ですがその分仕事の質は高くなり、リスクを回避出るため大きな落とし穴に落ちることが少なくなります。
効率が悪いことやマルチタスクができないことで自己評価を下げるのではなく、仕事が丁寧でリスク回避能力も高いのですから、自分を褒めてもよいのです。
行うタスクを一つに決めて、それを丁寧にやっていけばよいのです。
HSPの方々にはそうでない人はもっていない能力を持っています。
感受性が豊かなので、良いものがわかります。
人の良いところを見つけるのも得意ですし、些細な事から喜びを感じることもできるのです。
物事に感動することも人一倍ですので、人の幸せを心から喜ぶことができます。
人の話を丁寧に聞くことも得意です。
そのうえ直観も鋭いので、聞き手としては最高です。
深く考えるのも得意なので、皆が気づかないことに気づき改善させていくことにも長けています。
そして良心的でまじめです。
決して無責任なことはしないし、困った人がいると助けずにはいられない方々です。
そう、HSPの方々は素晴らしいのです。
自分の特性を知って、安心していられる環境にいてのびのびと仕事をしていけば、素晴らしい成果を発揮するはずです。
自己否定はやめて、ありのままの自分に誇りを持ちましょう。
たくさんの強みがあるのですから、それを生かせる環境で自由に全力を出していけばよいのです。
自分のやりたいことを抑圧せずに、心の声に耳を傾けましょう。
その声を大切にしていくことで必ず幸せになれるはずです。
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