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横浜つづきクリニック
-内視鏡内科 心療内科 内科-
2020年04月08日
心療内科
発達障害という言葉を最近は良く目にするようになりました。
ADHDは注意欠如・多動症、ASDは自閉スペクトラム症、LDは学習障害のことで、発達障害とは主にこれらを指しての総称です。
これを読まれている方々の中にも、自分は「発達障害かもしれない」とか、身近な人が「発達障害かもしれない」と感じている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
いわゆる「発達障害かもしれない症候群」という言葉ができてしまうほど、世の中には自分が発達障害かもしれないと思っている方がたくさんいます。
それはつまり、「注意欠如・多動」傾向の方や「自閉症スペクトラム」傾向の方が本当にたくさんいるということです。
発達障害というものを、その名前から何かの能力の発達に障害があって劣っている人というように理解されている方が多いのではないでしょうか。
私たち心療内科医は、発達障害を「病気」と捉えるのではなく、ある種の極端な「特性」を持つ傾向の人と考えます。
ADHDは気が散りやすく、じっとしていられず、そそっかしい人で、ASDは空気を読むのが苦手で対人関係がうまくいかず、ある特定の物事に強いこだわりを持つ人です。
このような人はどこにでもいるし、だれでも少しは当てはまるものです。
発達障害というからには障害域にあるものをいいます。
診断基準にも「症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている」とあります。
ですから空気を読むのが苦手で、物事にこだわりが強かろうと、じっとしていられずにそそっかしかろうと、その程度が生活に支障がなければ障害域にあるとは言えません。
ADHDのD、ASDのDはdisorder(障害)のDです。
あなたは、何々の障害ですと診断することにはそれほど意味はありません。
かえって障害であると言われることにより自己評価が下がって抑うつ気分になり、そのせいで生活に支障が出てしまうかもしれません。
大事なのは、その生きづらさの原因になっている自分の特性を理解して、自分の置かれている環境を調整していき、生きづらさを軽減していくことです。
①ADHD(注意欠如・多動症)
不注意でうっかり者、忘れ物が多くて片付けが苦手な部分(注意欠如)と、じっとしていられず落ち着きがない部分(多動)を持った人達。
成人してからは「多動」の方は自制することができるようになり目立たなくなることも多いので、「ADD」とH(hyperactivity 多動)を省いて表現することもあります。
ADHDはその傾向にある人は非常に多く、小児期には人口の5~10%程とも言われています。
診断基準は少しややこしいので、かみ砕くと以下のような人たちです。
A 不注意
B 多動性、衝動性
上記の多くに当てはまる人がADH傾向の人です。
上記のために生活に支障が出ている人、障害域にある人がADHDになります。
診断基準自体が主観によるもので、捉え方によって変わってきてしまう上に、強弱があります。
ちょっとそうかもしれないという人もいれば、だれが見てもそうだという人もいます。
大事なのは診断を下すことではなく、その傾向を知ることです。
ADHの傾向があると、小学校の間はやんちゃで面白い子、目立つ子と理解されて人気者だったりしますが、高校、大学、社会人になり遅刻や忘れ物が目立ち、うっかりミスも多くなるため自己評価が低くなっていきます。
ただでさえ環境に適応しようと努力しているにも関わらず、周囲の評価が低くなってストレスをため込んでいきます。
そこに自己評価の低さが更に重なると抑うつ気分に陥り、仕事に行けなくなることもあります。
そうなると日常生活に支障が出ている段階になりますのでADHDと診断されます。
つまり周囲の環境のせいでADH傾向の人がADHDになってしまう事も少なくないということです。
②ASD(自閉スペクトラム症)=
こだわりが強く、こだわりを対人関係よりも優先する人。
空気が読めず、相手が気を悪くしているのにも気が付かずに、自分の話したいことを話し続けてしまう人。
仕事はできるけど、人付き合いでいつも苦労を感じている人々。
推理小説の探偵役などの多くはこの特性を持っている人が多いです。
アスペルガー症候群という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、このアスペルガー症候群もASDに入ります。
(現在アスペルガー症候群という名称は使われなくなっています)
診断基準は例によってややこしいので、かみ砕いて言うと以下のような人です。
A 相互におけるコミュニケーションの障害
・喜びや楽しみ、悲しみ、達成感といった感情を人と分かち合うことに興味がない。
・一人でいることを好み、人と話をする時もまるで受け身か、一方的に話す傾向がある。
・独り言が多く、会話に抑揚がなく、敬語も使えず、皮肉や冗談が通じない。
・表情や、身振り、視線の変化など、非言語的コミュニケーションが理解できない。
・相手の感情に気が付かず、話し相手が急に怒り出しても、理由が理解できない。
・人の気持ちを動かすことに興味が持てない。
B 限定された反復する様式の行動、興味、活動
・特定の物事に非常に強い興味を持ち、それ以外の物事に対して興味を持てない。
・特定の手順や、特定の物の配置、行動パターンなどに強くこだわり融通が利かない。
・特定の分野に非常に強い関心をもち、その分野における豊富な知識がある。
・特定の感覚刺激に対して敏感、もしくは鈍感で、特定の光や音や味、触感などを非常に嫌がる、あるいは人が嫌がる感覚を嫌がらないことがある。
上記のA、Bの多くに当てはまる人がASの傾向の強い人です。
そしてそれが日常生活に支障をきたしている場合にASDの診断となります。
小説や映画、ドラマの探偵役を思い浮かべてみてください。
例えばシャーロックホームズ……自分の趣味や興味が非常に限定されていて、非常に深くて豊富な知識をもっています。
誰が相手でも態度を変えずにずけずけと物を言い、相手が怒っても気付きもしません。
独り言が多く、友人は少なく、彼の特性を理解している人でないと、うまく付き合うことができません。
まあ、シャーロックホームズは極端な例ですが、上記のような特性を持った方も、ADH傾向の人ほど多くはないものの良く見かけると思います。
特に専門色の濃い分野の職場にはAS傾向の人が多く見られます。
そしてやはり、この特性には強弱があります。
いかにその傾向が強いかは主観によるところがどうしても多くなります。
つまり診断が診る人によって変わってしまう事があります。
また項目Bのみの特性に当てはまる人はたくさんいます。
例えば、アニメオタク、映画オタク、車オタク、野球選手オタクなど、いわゆるオタクと呼ばれる人たちです。
その人たちとASの傾向の強い人との違いは、項目Aに該当するかどうかです。
オタクの人同士で集まって、カルトトークで盛り上がることは、オタクの人ならみんなあります。
AS傾向の人は、自分の興味の対象に他の人が興味を持っていようがいなかろうが、相手を遮ってまで興味のある事を話し続け、相手が呆れていたり、気を悪くしていたとしても気が付かないのです。
③LD(学習障害)
学習障害LDとは、全体的な知的発達に遅れはないのですが、「読む」「書く」「計算する」のうちのどれか、もしくは複数が極端に苦手な状態です。
これは単純に苦手というだけの問題ではなく、見て、認識して、理解して、行動するといった過程のどこかのプロセスが非常に困難であるという事です。
例えば「読む」事に学習障害があるとすると、ひらがなの集合が言葉になることが分からなかったり、言葉を見て、何を意味するのか分からなかったり、どのように発音するのかが分からなかったり、ひらがなそのものの意味が分からなかったりといった、様々なプロセスのどれかに困難があるという事です。
持って生まれた体質なので、苦手なものを無理に克服しようとするのではなく、特性を知って対策を練っていくことが大切になります。
LDのほかにもDCDといって発達性協調運動症というのも発達障害の一種です。
これは運動が極端に苦手だったり、手先が極端に不器用だったりして生活に支障をきたしているものを言います。
ADHDの傾向やASDの傾向は強弱があります。
そして多くの場合この2つは重複します。
ADHDとASDの両方の傾向が強い人もいれば、ADHDの傾向が強く、ASDの傾向も少し持っている人もいますし、逆にADHDの傾向が弱く、ASDの傾向が強い人もいます。
実際に外来をしていて、純粋にASDだけの人やADHDだけの人よりも重複していてどちらかが強く出ている人の方が多くいらっしゃいます。
そして発達障害を解決していくには特性を理解していく必要がありますので、ADHD、ASDの枠にとらわれずに傾向の強い特性を個々に理解していく方が大事という事になります。
例えば、それぞれの特性の強さを5段階で表すとして、ある人の特性は共感の障害が2、こだわりが5、感覚面の異常が4、不注意が4、段取りの悪さが3、衝動性が1、のように表していくこともできます。
数字の大きさは特性の強弱を表すわけですが、本人がどう感じているか、周囲がどう感じているかによっても異なりますが、数字化するとそれぞれの特性の強弱が分かりやすくなります。
このように個々の特性を判断していき、ADHD傾向が強い、ASD傾向が強いというふうに理解していきます。
つまり診断にこだわる必要はないということです。
診断よりも特性を知って環境を調整していくことの方が重要なのです。
外来をしていて、発達障害の傾向のある人に、あなたは発達障害ですとは言いません。
発達障害と言うと、病気のイメージが強くなります。
発達障害の傾向のある人はやらなければならないことに人一倍努力をして、何とか環境に適応しようとしています。
そこに「あなたは病気です。周囲の皆さんにも病気であることを伝えて環境を整えましょう」と言われも、自己評価を低くしてしまうだけで、解決には向かいません。
自己評価の低さが抑うつなど二次的な障害を生み出して学校や会社に行けなくなり、それこそ障害域に足を踏み入れてしまいます。
何の特性があって、その強弱がどれくらいなのかを理解して、環境の調整をしていく方が、ずっと重要なのです。
まずは自分が特性を理解して、できる範囲で身の回りを調整していきます。
自分のやりたいことで学校や仕事を決めていく際に、環境調整の実現性を考えていきます。
「~が苦手」でも出来る事、可能な場所を選んでいくことを考えます。
つまり特性に合わせて生活を調整していく方が楽になります。
自分が何をやりたいのかを良く考え、それに対して自分の特性が、どの程度そのやりたいことに対して障壁になるのかを考え、バランスを取っていきます。
基本的にはやりたいことを優先していくわけですが、そのためには特性のために努力を要することも出てきます。
そのバランスを考えていくわけですが、その際に特性を優先していった方が楽になることも念頭に置いておきます。
次に、やりたいことを行うために、特性により「苦手なこと」をある程度は克服しなければならないものが何であるのかを分かるようにしていきます。
そして「苦手なこと」を行える環境調整を次に行っていくのです。
自分の周囲にいる人にも、ある程度はその特性を理解しておいてもらった方が過ごしやすいです。例えばマルチタスクが苦手であれば、「私は一つずつこなしていく方が効率が上がるタイプなので一つずつやらせてください」とか、「まずこれを片付けて、その次にこれを行って、最後にこれを始めていきますが、よろしいですか?」のように、苦手な特性をはっきり言わないやり方もあれば、「私は同時に複数のことをこなすのが苦手なので、ご配慮ください」と苦手な特性を予め話しておいても仕事はやりやすくなります。
そのうえで、マルチタスクが苦手な方は新しい仕事を頼まれた時点で前の仕事を忘れてしまうことが多いので、ノートなどを活用して、常にTo Do Listを作って終わったものからチェックしていくようにするなどの、いろいろな工夫もしていきます。
ADHDやASDの傾向のある人は、苦手なことの裏に得意なことが隠されていることが多いものです。
というより苦手と捉えるのではなく、優先するものが異なると言った方が良いかもしれません。
例えば、融通が利かないこだわりの強い特性のある人は、他のことに目もくれずに一つのことに集中してやり遂げることができるという特性と捉えられます。
こだわりが強い分、その分野の膨大な知識を持っている人も多いのです。
また空気が読めないという特性を持っている人は、人に何を言われても動じないという特性を持っているし、言いにくいことでも言葉にできるという特性も持っているわけです。
このような人は気の合うもの同士であれば、うまく付き合っていけます。
不注意の特性を持っている人は、失敗にめげない特性を持っていることが良くあります。
多動、衝動性の特性を持っている人は、行動力があって、思い立ったらすぐに行動にだせるという特性でもあります。
このように特性のネガティブなところばかりに注目せず、ポジティブなところを生かせるような環境に身を置くことが大事です。
そのうえで、苦手なところを理解してくれそうな人に理解してもらうようにしていきます。
つまり困ったら人に相談できる環境を創ることも大事です。
ADHDやASDの特性を持つ人にとって最も良くないのが、その特性を本人も周囲の人も理解できず、無理を重ねてしまって失敗を重ねるうちに人と衝突するようになり、本人の自己評価が下がってしまったり、人間関係がひどく傷ついたりすることです。
苦手な特性を打ち明けた人が、周囲にそのことを誹謗したりするのも最悪です。
そんなことになれば本人の自己評価はどんどん下がっていってしまいます。
相談するのは信頼できる人でなければなりません。
ADHDやASDの傾向のある人はうつ病や適応障害を発症することが、その他の人よりも高いことが分かっています。
生きづらさを抱えながら懸命に生きているから、背負うものがどうしても多くなってしまうのです。
少数派のため理解してくれる人も少ないのです。
まずは自分の特性を知り、自分のやりたいことも、しっかりと心の声を聴いていき、周囲の環境を調整していきましょう。
きっと今よりも生きやすい環境を創って行けるはずです。
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