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横浜つづきクリニック
-内視鏡内科 心療内科 内科-
2020年05月12日
心療内科
強迫性障害とはパニック障害と同様、気分障害の一つです。
気分障害は非常に頻度の高い疾患であり、従来神経症と呼ばれていたものの多くがここに含まれます。
それに対してうつ病や適応障害は気分障害に分類されますが、不安障害は気分障害の1.5倍くらいの有病率があります。
また不安障害の80%以上は気分障害と併存しています。
強迫性障害(OCD)は強迫観念(Obsession)と強迫行為(Compulsion)のどちらか、もしくは両方を持ち、多くは両方を有します。
つまり強迫観念を打ち消すために脅迫行為を繰り返すもので、それが社会生活に支障をきたすレベルにあるものを強迫性障害と呼びます。
代表的なものに戸締りや火の元を確認する行為checking、何度も手を洗う行為washing、なんでも数える行為countingがあります。
本人も強迫観念をばかげた考えだとか、考えすぎだと思っています。
しかし確認のために強迫行為を繰り返さないと強い不安が起こってしまう、あるいは不安を打ち消すためにその行為を行わずにいられないのです。
自分でその行為はばかげた行為だと思っているわけですから、羞恥心をいだいてしまっている人も多く、だれにも相談できずにずっと隠してしまい、ひとりで苦しんでいる人も少なくありません。
強迫性障害は原因のはっきりわかっている疾患ではありませんが治療法の無い疾患でもなく改善していくことができる疾患です。
不安障害の一つですので、その根本には不安感があります。
つまり安心感を持つことによって症状を軽減させていくことができます。
人は不安を持つもので、不安を緩和して安心感に変えていく、神経伝達物質を持っています。
ですから、この神経伝達物質が枯渇した状態では不安感を打ち消していくことができず、心の中で増大してしまいます。
神経伝達物質のセロトニン、ドーパミンなどが安心感や気力などに関与しますが、これらの物質はタンパク質が原料であり、腸管で作られます。
腸管の機能が落ちている状態では十分に神経伝達物質を作ることができまず、また原料のタンパク質が不足している状態も神経伝達物質を減少させます。
神経伝達物質を作る回路を回すための補因子として鉄や亜鉛、ビタミンB群が必要になり、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンB群の欠乏が神経伝達物質の量を減らし、安心感を持つことができなくなるのです。
これら栄養素の不足が強迫性障害の原因になり得ます。
強迫障害の症状には以下のようなものがあります。
・確認行為(checking)
戸締り、火の元、スイッチ等を確認せずにはいられません。
一度戸締りをきちんとして家を出て、しかし途中で戻って再度確認しないと気が済みません。
寝る前の戸締りも布団に入ってからもう一度起きて確認して歩きます。
繰り返し確認しないでいでられないところがポイントです。
・洗浄、不潔恐怖(washing)
細菌、微生物等の目に見えない汚染に恐怖を感じます。
何度も手を洗ったり、微生物に汚染されていると本人が考えるもの(ドアノブやつり革など)に触れなくなります。
手も汚染されていると考えるので、何度も洗わなければ気が済みませんし、洗濯物が床に落ちたら洗い直し、食器も人が触れたものは使用できなかったりします。
・数字へのこだわり(counting)
なんでも数えなければ気が済まないものや、数にこだわる傾向があり、特に不吉な筋などを許容できません。
・儀式行為
物の配置、左右対称性、置き方の順番などにこだわりが強く、その自分のルールを破ることが出来ません。
物のしまい方や、しまう物の配列にもルールがあり、物事の進め方や食べ方など、ルール付けをしてしまったものは、従わずにはいられなくなります。
・加害恐怖
自分のせいで、誰かに被害を加えてしまっている可能性を極度に不安に思います。
例えば自分が落としたもののせいで誰かがケガをしたり、死んでしまったりするかもしれないという恐怖を拭い去ることが出来ません。
上記のような強迫観念と強迫行為に苛まれていると、全般性不安障害やうつ病を併発しやすくなります。
常に不安が頭から離れず、体の緊張が取れないため筋肉の痛みや関節の痛みが出ることもあり、不眠、食欲低下、集中力や判断力の低下、イラつき、焦燥感など多彩な症状がみられるようになります。
そうして日常生活に支障が出て来るようになると強迫性障害の診断となります。
強迫性障害の治療はどうするのでしょうか。
不安感が病状を悪化させ、不安感の軽減が何よりの治療になるという事です。
まずは不安感を軽減させるための脳内神経伝達物質を増加させるようにします。
神経伝達物質のセロトニンやドーパミンなどのモノアミン体はたんぱく質が原料です。
そして神経伝達物質は腸管内で作られますが、作るための回路を回す補因子として亜鉛、鉄、ビタミンB群、それにしっかりとしたエネルギーが必要になります。
採血を行って、不足している栄養素を調べ、不足しているものがあれば、それをしっかりと摂るようにします。
たんぱく質が不足しているようなら、肉や魚、卵、大豆といった食材を摂ります。
しっかりとっているつもりでも足りていない方は多いです。
プロテインを飲んでも良く、亜鉛や鉄はサプリメントや内服にて補充していきます。
ビタミンB群もサプリメントで補充が良いでしょう。
栄養素をしっかりと摂りつつ、原因となる食材を制限していきます。
不安感が増大する原因食材は糖質、炭水化物で、そのほかにカフェインやアルコールなども不安感を増大させます。
これらを制限しつつ、たんぱく質でしっかりとカロリーを摂取していくのが大事です。
環境調整も大事で、強迫性障害の人は周囲の人、特に家族を巻き込むことが多々あります。
自分の強迫観念を家族に強要することがあり、特に洗浄や不潔恐怖に関しては、特に大事に思っている人に対して強要してしまいます。
手を洗わせたりもしますし、お風呂に入らされたりもします。素手であちこちを触られることを怒ることもあります。
そのような強迫観念に対して周囲の人、特に家族が怒り返したり、それを馬鹿にしたりするのは逆効果で、理解してあげる必要があります。
身近な人が理解を示し、協力していく環境が本人の安心感を生み出します。
ただし、本人の要求にただ答えているだけでは、徐々にエスカレートしていくこともあり、まずは本人に、強要は思い通りにならず、かえってストレスをためてしまうものであることを理解していただくことが大事です。
家族と一緒に、本人のルールを少しずつ緩くしていくつもりで、ご家族は協力していくと良いです。
そして家族が理解に努めて、支えてくれていることが本人に伝われば、それも安心感につながります。
栄養療法や環境調整に加えて、内服治療を要することも多いです。
内服の第一選択薬はSSRIという種類の薬になり、これは脳内の神経伝達物質であるセロトニンの濃度を増やす薬になります。
セロトニンは不安感を打ち消す作用があります。
強迫行為が強い場合には、保険適応外になりますが、少量の非定型向精神薬を併用します。
2剤併用することにより強迫観念と強迫行為の度合いが低くなっていきます。
そして不安レベルがある程度低くなった後、不安のレベルを考えて、低いものから徐々に暴露療法と反応妨害療法に挑戦していきます。
ハードルの低いものからゆっくりと越えていくのです。
つまり強迫観念を起こす対象に少しずつ暴露していき、強迫観念を少しずつ我慢して反応を妨害していくのです。
慌てずにゆっくりとひとつずつハードルを越えていくことが大切です。そして何よりも大事なのは、病気に立ち向かう気持ちで、良くなろうという気持ちです。
気持ちが体と心の向上に向いている時点で回復への大きな一歩を踏み出したと言ってよいでしょう。
それと、できれば一人で戦うのではなく、支えになってくれる信頼できる人の存在がいることが望ましいです。
強迫性障害は非常に苦しい状態で、しかも人に理解されにくいものです。
人知れず一人で悩んでいると、症状が重くなってしまう可能性があります。
治療が早い方が、良くなるのも早く、新たに出来るようになったことや、やらずに済んだことが、ほんの小さなものでも、一緒に喜び、話を聞いてくれる存在が必要です。
自分はそうかもしれないと思ったら早めにご相談ください。
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