横浜つづきクリニック

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クリニックブログ

適応障害とは

2020年05月18日

心療内科

心療内科では最もよく見るものの一つで、適応障害とは特定の環境因子における心因性の反応として、抑うつ状態や様々な身体症状を呈するものです。
特定の環境因子とは、会社であったり、学校であったり、家庭であったりします。
多くはそこでのつらい体験や、理不尽な思いなどを少しずつため込んで心に負荷をかけていくことによって起こり、辛さに耐えて、頑張って、そうして抱えきれなくなって抑うつを呈することもあれば、無意識のうちに心に負荷をかけていって、ある日急に背負っていたものに押しつぶされるように動けなくなることもあります。

抑うつ状態とは、気分が滅入って、気力がなくなり、今まで楽しんでいたことが楽しめなくなっていく状態です。
倦怠感が強くて、集中力や判断力がいつもより悪くなり、夜に眠れなくなったり、朝起きられなかったり、食欲がなくなったり、食べ過ぎてしまったりといった変化が見られるようになります。
何か、鉛を背負っているように体が重くなって、夜になると色々と考えてしまい気分が落ち込み、翌朝には仕事に行かなければいけないのに体が動かない。
気が付くと涙を流していたりすることもあります。

様々な身体症状がなぜ起こるのでしょうか。
心に負荷がかかっているのに、それを押し込めて、あるいは気が付かずに容量以上の負荷をため込むと、心は防御反応をとるようになります。
その防御反応として、心が逃げるための代わりとして体調の不良という形が現れてきます。
現れる症状としては、胃腸症状(腹痛や嘔吐や下痢)、動悸や息苦しさ、頭痛やめまいや耳鳴りなど様々な症状があります。
微熱が出ることもあります。

そしてそれらの抑うつや身体症状は、特定の環境因子からうける負荷が調整されると比較的早期に軽減されていきます。
つまり原因となっている環境、たとえば学校をお休みしたり、会社をお休みしたり、家族から離れてみたりすることで症状が軽減していきます。
しかし、それを周囲から怠けているだけだとか、心が弱い等と言って責められたりすると、自責感や自己評価の低下が起こり症状は悪化してしまう事もあります。
周囲の理解も重要という事です。
そして適応障害を起こしやすい性質をもともと持っている方も多く見られます。
回避性や依存性、強迫性などのパーソナリティーやHSP(刺激に対して敏感な人たち)、発達障害の傾向のある人達は、知らず知らずのうちに心に負荷をため込むことが多かったり、環境の変化に対して負荷を負いやすかったりしますので、適応障害を発症しやすくなります。
またある種の栄養の偏りからも、心に不安を抱え込むことが多くなることが分かっています。

ですから治療はその心に抱えている負荷をとることが軸になり、原因となる性質を理解して環境の調整を行っていく必要があります。

現代には息を切らしながら走り続けている人が多すぎます。
もともと適応障害に陥る方はまじめで、頼まれたことを断るのが苦手で、自分に厳しい頑張り屋で、人にものを頼むくらいなら自分でやってしまうような、そんな優しい方々が多いのです。
人生は短いようで長いもので、少し立ち止まって、心と体をお休みさせてあげることも大切です。

治療にお薬やカウンセリングを要することもありますが、当院では栄養療法も行っています。
血液の検査で栄養の偏りを確認して、不足しているものや摂りすぎているものを調整することによって心や体のコンディションが良くなっていく人もたくさんいらっしゃいます。

適応障害にはどんな症状が出るのでしょうか。
典型的な例はこんな場合です。会社に勤めていて、きつい上司もいるし、プレシャーもあるけど、それは期待されているからだと思って一生懸命仕事をしてそれなりに成果も出している人がいたとします。
会社のため、家族のために自分は頑張らなければならないとおもって、多少疲れがたまっていても、まだ頑張り続けます。
そこにもう一つプロジェクトを頼まれたとします。
断ることが苦手なこともあるし、もう少し頑張れそうだと思って、さらに仕事に精を出していきます。ところある日、会社に行く準備をしていると、体が重くなってきます。
やけに準備に時間がかかってやっとの思いで駅に向かう途中で、急に吐き気に襲われて嘔吐してしまいます。
風邪かなと思って、会社に連絡してその日は休みをもらいますが翌日も朝は起きることが出来ません。
何とか行こうとして駅に向かうとまた嘔吐してしまう。

このような発症の仕方をする人を多く見かけます。
もちろん1例にすぎず、様々な環境下で少しずつ心に負荷をかけていってしまう方が非常に多いのです。

それでは適応障害の症状、そして診断の仕方を見ていきましょう。
最も多くみられるのはうつ気分ですが、そこに環境因子が関わらない場合や、症状が強く、うつ病の診断を満たしている場合は適応障害の診断ではなくなります。

うつ気分になると、睡眠時間の減少や増加が見られてきます。そしてほぼすべての活動に対する興味が薄れていき、過剰な罪責感や無価値感がでてきて気力が低下し、疲れやすくなります。
集中力や判断力が低下していくので以前できていたことでもミスするようになったり、時間がかかるようになったりします。食欲は減る人もいれば増える人もいます。
何か鉛でも背負っているように体の動きや思考速度が遅くなります。
あるいは焦って落ち着かなくなることもあります。
それらが強く出てくると、消えてなくなってしまいたいという気持ちまで生まれてきてしまいます。

このような症状がほぼ一日中、環境にかかわらず2週間以上続くようであれば大うつ病障害の診断となります。
環境因子から離れている間、例えば長期の休暇などのお休みの時は元気に過ごすことが出来るのですが、上記症状のため生活に支障が出てくるようになれば適応障害の診断となります。

うつ気分には本人も気が付かないことがあり、気づかないままに環境因子にさらされ続けていれば、身体表現性の症状が出てきます。
少しずつ心にかかってくる負担をどんどん積み重ねていけば、いずれは積めなくなるか、つぶされてしまうかです。
危険を感じた時点で心の方は防御反応を本人の無意識化に、本人の了承も得ずに勝手に始めていきます。
そこで起こってくるのが体調の不良、身体表現性の症状です。

食事にも気を遣っているのに胃が痛くなって、内視鏡をやっても原因が見られません。
あるいは急に嘔吐をしたり下痢をすることもあります。
やはり検査をしても原因はつかめません。
あるいは動悸や息切れを感じるかもしれません。
内科に受診して心電図や胸のレントゲン撮影を行いますが、やはり異常はありません。

この時点で、自分の心と体に強負荷がかかっていると自覚している人の場合は心療内科を思い浮かべ、受診してくださるかもしれません。
でも多くの場合は心に対する負荷に気が付かず、症状をめぐっていくつもの病院やクリニックを回り検査をしても原因がわからずに余計心に負荷をかけてしまったりしてしまうのです。

その他によくみられる症状としては動悸、息切れ、呼吸苦などの胸の辺りの症状や、めまい、喉の違和感、頭痛、耳鳴りなどで、これらが、例えば会社に行く、学校に行く時に限って起こり、お休みの時は比較的症状が出にくかったりします。

症状のために仕事や学校に行けなくなっているようであれば、生活に支障が出ているレベルになりますので、適応障害と診断されます。
診断を下すことはそれほど重要ではありませんが、会社を休職するなどの環境の整備をする際に診断書が必要になりますので、その場合は診断して病名を記載します。

適応障害に陥りやすい人々として、発達障害の傾向のある人や、HSP、回避性パーソナリティーを持つ人が挙げられます。

これらのように適応障害という診断がつく人の裏側には他の特性が隠れていることが多いのです。
上記のほかにも、依存性パーソナリティー障害、境界性パーソナリティー障害、アダルトチルドレンなどが適応障害に陥りやすい特性と言えます。

もちろん適応障害に陥る人すべてにこのような特性があるわけではありません。
自分が置かれた環境が過酷であれば、だれでも適応障害に陥る可能性はあります。
ただ、適応障害で来院される人は以下のような人が多いです。

・基本的に真面目である。
完璧に仕事をこなしたいと思っている。

・人に頼まれると嫌と言えない。
頼まれた仕事はきちんとやらないと気が済まない。

・人と揉めるくらいなら、自分が我慢すればよいと思っている。

・誰かが辛い思いをするくらいなら、自分が辛い思いをした方がましだと思っている。

・周りには自分よりできる人がたくさんいると思っている。

・頑張り屋である。

・大変な時でも助けを必要なとしている人を放っておくことが出来ない。

・チームの成績が悪いと、自分のせいにしてしまう。

・チームの中では自分の意見より人の意見を尊重してしまう。

 

このようなタイプの人は、周囲の人からすると物を頼みやすいし、頼んでも引き受けてくれると思いますから、どんどん損な役割になって行ってしまいます。
そして自分の容量をオーバーしても頼まれ続けて断れずに負荷をどんどんため込んでいってしまうのです。

そして、その負荷をこなしきれない自分の評価を自分で下げていってしまう。
悪いループに陥っていくのです。

しかし、上述した特徴をもう一度見てみてください。
これらは全て、その人の利点でもあるはずなのです。
このような人と仕事をしたい人はたくさんいるはずです。
誇れるもののはずなのに、その負荷のせいで自己否定に陥ってしまう、これは悲しいことです。

こんな素晴らしい人たちは、きちんと治療もおこなって、本来の自分、本当の自分を取り戻して自己否定を辞めて、自己肯定感を強く持っていく必要があります。

 

適応障害の治療は、

適応障害の原因になるのは環境因子ですから、環境調整が一番の治療になります。
背中に重荷をどんどん背負って、それでも耐えて、耐えて、とうとう背負いきれなくなっているのです。
背中の重荷を降ろす必要があり、できれば、少し環境因子から距離を置くのが良いです。
仕事や学校であれば少し休んでしまいましょう。
少しくらい休んでもいいはずです。
これだけ頑張ってきたのですから。

心の負荷が大きい場合は、診断書を提出して思い切った休暇を取ることも必要かもしれません。
心への負担のせいで、体調の不良が強く出ている人や、消えてなくなってしまいたいとまで思い詰めている人は、相当に追い詰められています。
心の重荷を取って、心を軽くしていきましょう。

発達障害やHSP、回避性のパーソナリティーやアダルトチルドレンなどの気質を持っている人は、まずその特性を理解して、環境調整をしていくことが重要です。
それぞれの環境に対する対策を取っていくこと、そして自分の心の声をよく聴いて、感情も出せるようにしていくことも重要で、それにはカウンセリングも有効です。

栄養療法も有効で、当院では採血を行い、不足している栄養分子や摂り過ぎている栄養分子を推定します。不足しているものを補い、摂り過ぎているものを制限することで、心が安定していきます。
心に安心感を持たせたり、気力を起こさせたりするために神経伝達物質が分泌させます。(モノアミンであるセロトニンやドーパミンやノルアドレナリンなど)
これらの原料はタンパク質になり、また作るための補因子として鉄や亜鉛やビタミンB群などが必要になります。
これらが不足している人は補充していくことで気持ちが楽になって、気力も出てくるようになっていきます。

薬に頼らない治療を基本としますが、症状が重度の場合はお薬を使用することもあります。
内服薬の第一選択薬はSSRIやSNRIといった抗うつ薬になります。

抗不安薬は依存性があるため、使用は最低限に抑えます。
できれば屯用使用といって不安感が強くて仕方がない時にだけ内服するようにします。
SSRIやSNRIといった抗うつ薬にも副作用があります。
眠気や消化器症状がみられることがありますが、少量から使用してゆっくりと常用量まで増やしていくことによって、副作用を軽度に抑えることができます。
また副作用は通常1~2週ほどで軽減して無くなることが多いです。

お薬の治療を行う場合も内服治療単独で行うことはありません。
環境因子、心のケアを丁寧に行っていくことが前提です。

心に負担を与えさせてしまうような環境は、生産性を大きく減少させます。
仲間がお互いを支え合っていけるような環境づくりこそ、本当は一番重要です。

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