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ADHDの9割は誤診? 疑似ADHDとは

2020年06月08日

心療内科

以前にも発達障害のブログを書いていて、その時にADHDについても触れていますが、
最近また岡田尊司先生のADHDの本を読んで非常に良かったので、紹介もかねて書きたいと思います。
「ADHDの正体」という本です。

 

私たちも、近年急激に成人のADHDの人が増加していることに疑問を感じていましたし、
他院からADHDとして紹介されて来院されてくる人たちにことごとくコンサータ(中枢刺激剤)が処方されていることも、
これはまずいんじゃないかと思っていました。

 

最近の検索サイトの検索ワードとして、発達障害とADHDはモンスターワードで、
非常に気にされている方が多いと思われます。
多くの方が自分は、あるいは身内の方がADHDではないかと疑っているようで、
世間に「自分はADHDかもしれない症候群」の方がたくさんいるということです。

 

そして実際にADHDと診断される方は年々おそろしい勢いで増加しています。
ADHDはもともと先天的な脳の発達のトラブルによる病気です。
近年になって、その数が急に増加していくのはそもそもおかしく、
同じ発達障害のASD(自閉スペクトラム症)やLD(学習障害)の数は
増えていないのにADHDのみ増えていくのは矛盾しています。
つまり疾患そのものよりも、診断される人が増えているということで、
岡田先生の本では大人のADHDの9割は誤診であると言い切っていて、そして私もそう思います。

 

当院では、極力薬に頼らない治療を原則としていて、
必要のない処方は行うべきではないと思っています。
大人になって急にADHDの診断がつくということは、そうそうあるものではないと思いますので、
ましてや中枢刺激剤のような副作用の多く依存性もある薬を安易に出すことはしません。

 

本を読んで驚いたのは、米国では4歳から17歳までのおよそ10.2%がADHDと診断され、
6.1%が抗ADHD薬を内服しているということです。
20人に1人以上ということは、1クラスに1人は抗ADHD薬が処方されているということになり、
そしてその流れのまま成人でADHDと診断された人達もまた、抗ADHD薬を内服しているのです。
その9割が誤診だとすると、これは恐ろしいことです。

 

ADHDと診断された人の多くは、その症状、集中力がないことやミスが多いこと、
落ち着きのないこと、整理整頓が苦手な事等を簡単にチェックすることによって診断されています。
安易に診断されて、安易に内服を開始……最初のうちは効果がありますが、
徐々にその効果は続かなくなります。
しかしその効果が乏しいことが分かった時点では内服をやめられなくなっており、
惰性のように処方が続けられてしまうのです。

 

しかし実際は整理整頓が得意な人がいかほどいるでしょうか。
そこに更に仕事のストレスが加われば集中力は低下し、ミスが多くなります。
そんなときは思考がネガティブに傾いていますから、
チェックリストのほとんどの項目に該当する気がしてしまうものです。
そんな人にコンサータなどの中枢刺激剤を使用すれば、
はじめのうちは効果が出ますが、根本的な治療になっていませんから、
いずれ効果を実感できなくなってしまいます。

 

そして岡田先生はADHDと愛着障害の関連を解いていて、幼いころの不利な養育環境が、
時間を経てからのADHDの症状を生じる大きな誘因になることが、統計的に確認されているのです。

 

ADHDとは先天的な脳の発達の障害のはずですから養育環境は関係ないはずで、不安定な養育環境、
つまり愛着障害を抱えていることにより生じたADHDは本来の先天的なADHDではないと考えられ、
つまり疑似ADHDと言えます。

 

また愛着障害の一つである、脱抑制型愛着障害(脱抑制型対人交流障害)の症状は、
次のようなものです。

 

人見知りがなく、だれにでも近づいて馴れ馴れしく振舞います。
相手かまわず抱き着いたり、膝の上にいきなり乗ったりもしますし、
思ったことはすぐに口に出し、一か所でじっとしているよりも飛び跳ねたり歩き回ったりします。
だから目を離すとすぐにどこかに行ってしまいますし、
愛情や関心を引くために目立った行動をとったりもします。

 

これらの症状はADHDの症状とよく似ていて、
実際に脱抑制型愛着障害の多くはADHDと診断されてしまうのです。

 

このように愛着障害そのものがADHDを紛らわしい場合もあれば、
それとは別に愛着の問題を抱えたまま何年も経て、
その影響がADHDの症状として現れ強まっていくという過程をとる場合もあります。
このことも統計学的に裏付けられていてたとえば、
無秩序型愛着を示した子供が6年から10年後にADHDの症状を呈しやすかったり、
海外から養子としてやってきた子供たちのその後を追跡する長期研究でも、
愛着障害を認めたケースでは、
その後にADHDの症状や情緒の問題を生じやすいことなどが報告されています。

 

これらの愛着の問題を抱えたADHDや疑似ADHDの治療は、
中枢刺激剤でしょうか? もちろん違います。
愛着障害の解決が根本的な治療のはずで、
これら疑似ADHDにいくら中枢刺激剤を使用したところで後々まで効果が出るとは考えにくいのです。

 

自ら発達障害、特にADHDを疑って外来に来院される人はたくさんいますが、
その人たちに対して、ただADHDの簡易テストだけを行って診断して治療をするのは、ナンセンスです。

 

確かにその特性を知ることは重要ですから、
ADHDの要素がどれだけあるのかを確認することは必要です。
しかし最も大切なのは、その背景をしっかりと聞き取ることで、その人のことを、
その物語をしっかりと聞いて知ろうとしない限り、ADHDと断定することもできなければ、
治療を開始することもできないはずです。

 

当院では心療初診の人には十分に時間を取って背景問診をじっくりと行います。

 

ADHDであることに対して悩み、苦しみ、気分障害や不安障害を呈していることも少なくありません。
それらが、じっくりと話を聞くことによって先天的な問題ではなく、
解決していくことのできる問題であることを知ることは、その人にとって希望になります。

 

容易に解決できる問題ばかりではもちろんありませんが、
根本的な問題を解決していくために一生懸命になってくれる人が、その人達には必要なのです。

 

ADHDと診断されてかえって生きづらさを感じている人、
中枢刺激剤を内服しているのに良くならない人はもう一度その背景を我々に話に来てみませんか?

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