①栄養療法
不安感を軽減させるための脳内神経伝達物質「セロトニン」や「ドーパミン」などのモノアミン体は、腸管内で作られます。
作るための原料としてタンパク質、補因子として亜鉛、鉄、ビタミンB群、それにしっかりとしたエネルギーが必要になります。
採血を行って不足している栄養素を調べ、それらをしっかりと摂るようにします。
タンパク質不足なら、肉や魚、卵、大豆といった食材を摂ります。
プロテインを飲むのもよいでしょう。
亜鉛や鉄、ビタミンB群は、サプリメントや内服薬で補充していきます。
一方で、不安感を増大させる原因となる食材の摂取を制限します。
糖質や炭水化物のほか、カフェインやアルコールも控えめにします。
これらを制限しつつ、タンパク質でしっかりとエネルギーを摂取していくことが大事です。
②環境の調整
強迫性障害の人は、自分の強迫観念を家族に強要するなど、周囲を巻込むことが多々あります。
特に「洗浄、不潔恐怖」に関しては、大事に思っている相手に対して強要してしまいがちです。
手を洗わせる、お風呂に入らせるほか、素手であちこちを触られることを怒ることもあります。
そのような強要に対して、怒り返したり馬鹿にしたりするのは逆効果となります。
身近な人が理解を示し、協力していく環境が、本人の安心感を生み出すのです。
ただし、本人の要求にただ答えているだけでは、徐々にエスカレートしていくこともあります。
まずは本人に、強要は思い通りにならず、かえってストレスをためてしまうものであることを理解してもらうことが大事です。
本人のルールを少しずつ緩くしていくつもりで、ご家族が協力していくとよいでしょう。
家族が理解に努めて、支えてくれていることが伝われば、安心感につながります。
③薬物療法
栄養療法や環境の調整に加えて、薬物療法を要することも多いです。第一選択薬は「SSRI」という種類の薬になります。これは脳内の神経伝達物質であるセロトニンの濃度を増やす薬です。セロトニンは不安感を打ち消す作用があります。強迫行為が強い場合には、保険適応外になりますが、少量の非定型抗精神病薬をSSRIと併用することにより強迫観念と強迫行為の度合いが低くなっていきます。
④暴露療法・反応妨害療法 不安レベルがある程度低くなったら、徐々に「暴露療法」と「反応妨害療法」に挑戦していきます。
これは、恐怖や不安の対象のうちハードルの低いものから段階的に向き合って慣らしていき、強迫観念が起こるのを少しずつ我慢して、強迫行為をできるだけ行わないようにしていく方法です。
慌てずにゆっくりと一つずつハードルを越えていくことが大切です。
そして何よりも大事なのは、病気に立ち向かい、良くなろうという気持ちです。
気持ちが体と心の向上に向いている時点で回復への大きな一歩を踏み出したと言ってよいでしょう。
原因のはっきりしていない病気ですが、不安感を取り除いていくことで治療を行うことができます。
診察を重ねて不安感を取り除き、必要な栄養をしっかりと摂取し、少しずつ行動により自信を手に入れていくことによって、慌てずに時間をかけていけば克服できます。
また、できれば一人で戦うのではなく、支えになってくれる信頼できる人がいることが望ましいです。
新たにできるようになったことや、やらずに済んだことが、ほんの小さなものでも、一緒に喜び、話を聞いてくれる存在が必要です。
強迫性障害は非常に苦しい状態であり、しかも人に理解されにくいものです。
強迫観念や強迫行為をばかげたことだと思いながらも止められず、羞恥心により誰にも相談できずに苦しんでいる人も少なくありません。
人知れず一人で悩んでいると、症状が重くなってしまう可能性があります。
早期治療が早期回復へとつながりますので、「自分はそうかもしれない」と思ったら、お早めにご相談ください。