特定の環境因子における心の負荷による反応として、抑うつ状態やさまざまな身体症状を生じるものを適応障害といいます。
「特定の環境因子」とは、職場、学校、家庭などで、そこでのつらい体験や、理不尽な思いなどを少しずつため込み、自分の心に負荷をかけていくことで発症します。つらさに耐えて頑張った結果、抱えきれなくなることもあれば、無意識のうちに心に負荷をかけ、ある日、急に背負っていたものに押しつぶされるように動けなくなることもあります。
「抑うつ状態」とは、気が滅入って無気力になり、今まで楽しんでいたことが楽しめなくなっていく状態です。
倦怠感が強く、集中力や判断力が低下し、夜眠れず朝起きられない、食欲がない、食べ過ぎてしまう……といった変化がみられるようになります。
鉛を背負っているかのように身体が重くなり、夜になるとあれこれ考えてしまい、時には涙を流していたりすることもあります。
心に負荷がかかっていながらそれを押し込める、あるいは自分の容量以上に負荷をため込むと、心は防御反応をとるようになります。
それは、いわば心が逃げる代わりに体調不良という形で現れてきます。
例えば、胃腸症状(腹痛や嘔吐、下痢)、動悸や息苦しさ、頭痛やめまい、耳鳴りなどで、微熱が出ることもあります。
そして、これらの抑うつ状態や身体症状は、特定の環境因子から受ける負荷が調整されると、比較的早期に軽減されます。
つまり、職場や学校を休んだり、家族から離れてみたりすることで、症状が軽くなります。
しかし、それを怠けているだけだとか、心が弱いなどと周囲から責められると、自責感や自己評価の低下が起こり、症状がもっと悪化してしまうこともあります。周囲の理解がとても大切です。
もともと、適応障害を起こしやすい性質を持っている人もたくさんいます。
回避性や依存性、強迫性などのパーソナリティーやHSP(刺激に対して敏感な人たち)、発達障害の傾向がある人たちは、知らず知らずに心に負荷をため込むことが多く、環境の変化に対して負荷を負いやすいので、適応障害を発症しやすくなります。
また、ある種の栄養の偏りからも、心に不安を抱え込むことが多くなりやすいことが分かっています。
したがって、治療はその心に抱えている負荷を取り除くことが軸になります。原因となる性質を理解し、環境を調整する必要があります。
現代には息を切らせて走り続けている人が多すぎます。
もともと適応障害に陥る人は、真面目で頼まれたことを断るのが苦手、自分に厳しい頑張り屋、なんでも自分だけでやってしまうような優しい人たちが多いのです。
人生は短いようで長いもの。
少し立ち止まり、心と体を休ませることも大切です。
治療に薬やカウンセリングを要することもありますが、当院では栄養療法も行っています。
血液検査で栄養の偏りを確認し、不足しているものや摂りすぎているものを調整することで、心や身体のコンディションが良くなっていく人もたくさんいます。