うつ病は「気分障害」(気分の変動により生活に支障をきたす病気)の一つで、単極性と双極性があります。
単極性には、気分が落ち込むなどの抑うつ状態がみられる「大うつ病性病障害」と「気分変調症(持続性抑うつ障害)」があります。
気分変調症は、軽度の抑うつ状態が2年以上続くものです。
そして、うつ病の抑うつ状態に加えて、気分が高揚する躁状態(躁病エピソード)を持つものを「双極性障害(躁うつ病)」といいます。
生涯でうつ病にかかる確率は10%前後といわれています。
米国では男性の10人に1人、女性の5人に1人が生涯に一度はうつ病にかかるとされています。
適応障害なども含めれば、もっと発症頻度の高い病気です。
しかし、このような人々が精神科・心療内科を訪れることは多くなく、90%以上の人が一般内科を受診するといわれています。
また、このうちの30%以上に、うつ病をはじめとする何らかの精神疾患があるといわれ、こうした患者様に潜むうつ病に気付いて診断されるのは、実に25%にすぎないともいわれます。
うつ病は診断基準によって、しっかりと診断することが重要ですが、そのときの状態のみを把握して診断するのではなく、背景問診をしっかりと聴取することが何より大事です。
診断して薬を使用するだけでは根本治療にはならないからです。
そして、うつ病の診断の際に最も重要なのが、双極性障害(躁うつ病)を見逃さないことです。
長期間うつに悩まされている人には、少なからず双極性が潜んでいます。
気付かずに治療を行っていても改善しません。
双極性障害の場合は薬による治療が必要になる人が多いからです。
また、うつ病を薬を使わずに治療している場合はそれほど問題になりませんが、抗うつ薬による治療を行っている場合、双極性障害に気が付かないでいると、薬のせいで悪化してしまうのです。
この双極性障害を見逃さずに診断するためにも、しっかりと時間をかけて問診を行う必要があります。
うつ病の治療には、カウンセリングや薬物治療などがありますが、当院では栄養療法を大きく取り入れています。
うつ病の原因としては、脳神経伝達物質(脳内モノアミン)の不足が関係しているといわれます。
血液検査から何が足りないかを推定し、不足している栄養を補っていくことで、抑うつ状態は大きく改善します。
まずは薬物を使わない治療から開始し、必要に応じて薬を使用して治療していきます。
薬を使った場合も、「内服なしで大丈夫、安心して生活できる」という状態を目標に、薬の使用量を段階的に減らしていきます。
ゆっくりと、慌てず、あきらめずに一緒に治療を続けていくことが大切です。