こんにちは、髙杉です。今日は、内科のお話をします。


はじめに

前回の記事では、「夏バテかな」と思いやすい体調不良の中に、熱中症の入口が隠れていることをお話ししました。

では、「これは熱中症かもしれない」と気づいたとき、まず何をすればよいのでしょうか。水分を飲めば仕事を続けてもよいのか、自宅で休んでいてよいのか、それとも病院へ行くべきなのか。今回は、熱中症が疑われたときの対処法と、受診の目安を整理します。

大切なのは、我慢して倒れるまで様子を見ないことです。軽いうちに休み、冷やし、水分を取る。それでも改善しなければ病院へ行き、意識や動きがおかしければ救急車を呼びましょう。


水を飲んで頑張らず、まず暑い場所を離れる

熱中症が疑われたとき、最初にすることは、暑い場所から離れることです。

「水を飲んだから、もう少し頑張ろう」と思う方もいるかもしれません。しかし、暑い環境に居続けたままでは、体に熱が入り続けます。日陰で座るだけでは十分でないこともあるため、できればエアコンの効いた室内へ移動してください。

自宅や職場が近くになければ、スーパーや薬局、公共施設などに入るのでも構いません。クーリングシェルターやクールシェアスポットが近くにあれば、ためらわず利用しましょう。利用できる場所は、記事の最後に紹介するリンクから調べられます。

涼しい場所へ移動したら、衣服をゆるめ、皮膚を水で濡らして扇風機やうちわで風を当てます。保冷剤や冷たいペットボトルがあれば、首の両側、わきの下、足の付け根などに当てるのもよいでしょう。広い範囲は水と風で熱を逃がし、保冷剤は太い血管が皮膚の近くを通る場所に使います。

体温が上がるため、「解熱剤を飲めばよいのでは」と思うかもしれません。しかし、熱中症による体温上昇は、かぜなどの発熱とは仕組みが異なります。解熱剤は熱中症の治療にはならないため、薬よりも、涼しい場所への移動と冷却を優先してください。


軽いうちなら、自宅で回復できることもあります

意識がはっきりしていて、自分で水分を飲むことができ、涼しい場所で休むうちに症状が改善してくる場合は、自宅で回復できることもあります。

ただし、少し楽になっても、すぐに仕事や家事、運動へ戻ってはいけません。その日は涼しい場所で休み、疲労感などが残っている間は、炎天下での作業や長時間の外出、運動を控えましょう。

仕事で暑い環境を避けられない場合は、医療機関へ相談してください。状態によっては、炎天下や高温多湿の環境での作業を一時的に控えるための診断書や意見書を作成できることがあります。

一人で過ごしている場合は、軽い症状でも家族や周囲の人へ連絡しておきましょう。離れて暮らす家族から「熱中症かもしれないが、家で休んでいる」と連絡があった場合は、症状が落ち着くまで電話などで定期的に様子を確認してください。

会話が普段どおり成り立つか、自分で水分を取れているかを確認し、連絡がつかない、受け答えがおかしい場合は、近くの人に訪問を頼むか、救急要請を検討しましょう。


水分は一気に飲まず、少しずつ

水分を取る前に、意識がはっきりしていて、自分で安全に飲み込める状態かを確認します。

経口補水液があれば選択肢になりますが、それを探して補水が遅れては本末転倒です。手元になければ、水やお茶、スポーツドリンクなど、すぐに飲めるものから始めて構いません。大量に汗をかいた場合は、経口補水液などで水分と電解質を一緒に補う方法がありますが、塩や塩飴だけでは失われた水分を補えません。

心不全や腎機能低下がある人、医師から水分や塩分の制限を指示されている人は、その指示に従ってください。

吐き気があるときに一気に飲むと、かえって吐いてしまうことがあります。意識がはっきりしていて自分で飲める場合は、スプーン1杯程度、またはペットボトルのキャップ1杯ほどから、少しずつ増やしてください。

ただし、飲むたびに吐く、少量しか飲めない状態が続く、吐き気が強い、ぐったりしている場合は、自宅で補水を続けて粘る段階ではありません。医療機関を受診しましょう。


改善しない、水分が取れないときは当日中に医療機関へ

涼しい場所へ移動し、体を冷やして水分を補っても改善しない場合は、そのまま自宅で様子を見続けない方がよいでしょう。

吐き気や嘔吐が続く、十分な水分を取れない、頭痛が強い、ぐったりしている、症状が悪化している、いったん改善した後に再び悪化した場合は、当日中に医療機関へ相談してください。

「30分で治らなければ受診」のように、一律の時間を決めることはできません。年齢や持病、暑い環境にいた時間によって経過が異なるためです。休息と冷却によって、明らかに改善する方向へ向かっているかを判断の目安にします。

高齢者、小さな子ども、心臓病や腎臓病、糖尿病などの持病がある人は、受診のハードルを下げて考えましょう。体調を言葉で伝えにくい人では、やけに眠そう、食事や水分をほとんど取らない、動きたがらないなど、「普段と様子が違う」ことも大切なサインです。

日中であれば、かかりつけ医や近くの内科へ相談してください。夜間や休日で受診先に迷う場合、神奈川県では、かながわ救急相談センター「#7119」を24時間365日利用できます。

当院でも、救急車を呼ぶほどではないものの、熱中症が疑われる症状が続いている場合の診察に対応しています。


目・会話・動きがおかしいときは迷わず救急車を

「意識がおかしい」といわれても、判断しにくいかもしれません。そのようなときは、本人の普段の状態と比べながら、目・会話・動きの3つを確認してください。

は、呼びかけると開くか、目を開けていられるか。

会話は、受け答えができるか、話がかみ合っているか。

動きは、言われたとおりに手足を動かせるか、立ったり歩いたりできるかを確認します。

目を開けていられない、会話が成り立たない、指示どおりに動けない、立てない、歩けない、けいれんがある場合は、迷わず119番通報してください。

救急隊が到着するまでは、水をかけて風を当てるなど、可能な範囲で体を冷やし続けます。

特に大切なのは、意識や反応がおかしい人には、無理に水分を飲ませないことです。うまく飲み込めず、気管に入ってしまう危険があります。自力で安全に水を飲めない場合も、救急車を呼ぶ目安です。


おわりに

判断の目安を簡単に整理すると、次のようになります。

意識がはっきりしていて、自分で飲むことができ、涼しい場所で休むうちに改善してくる場合は、自宅で休みながら様子を見られます。

冷やして水分を補っても改善しない、吐いてしまう、十分に飲めない場合は、当日中に医療機関へ相談してください。目を開けていられない、会話が成り立たない、立てない、けいれんがある場合は、迷わず救急車を呼びましょう。

熱中症は、我慢して倒れるまで待つ病気ではありません。軽いうちに休み、冷やし、飲む。改善しなければ受診し、意識や動きがおかしければ救急車を呼ぶ。この判断が大切です。

暑さを我慢して予定をやり遂げることが、夏を元気に過ごすことではありません。休む、外出を短くする、予定をずらすことも大切な熱中症対策です。体調と暑さに合わせて無理のない過ごし方を選びながら、この夏も元気に楽しんでいきましょう。


参考