こんにちは、髙杉です。今日は私の日常のお話をします。


はじめに

先日、人生ではじめての「リトリート旅行」というやつに行ってきました。北海道の支笏湖のほとりに、2泊3日。日常から離れて、静かなところで自分と向き合う——そういう旅です。

かのスティーブ・ジョブズも習慣にしていたというリトリート。以前から気になっていたのですが、実践している友人に勧められて今回初めて企画しました。山にこもって、たっぷり考えごとをして、本を読んで、新しいアイデアを持ち帰る。帰ってきたら、日常の見え方が少し変わっていて、これからの生き方の方向性まで見えてくる——そんな魔法のような3日間を期待して、ノートパソコンを片手に、考えたいテーマをたくさん用意して出かけました。

ところが実際には、この旅行のほとんどの時間を、私はベッドの中で寝て過ごしました。

「わざわざ北海道まで来て、何をしているんだろう」と、自分にがっかりしました。でも、3日間を終えて振り返ってみると、これはこれで、いや、これでこそ良かったのだと思います。この旅で私は、「旅には4つの要素がある」ということと、「その中には下から積み上げていく関係がある」ということに気づきました。今日はこの話を通して、旅に限らず、私たちが「休む」ときに大切にしたいことを、お話ししてみたいと思います。


意気込んで出かけて、体に止められた

1日目は、とても順調でした。飛行機の中でテーマの1つであった8月のレビューを終え、宿でおいしい海鮮を食べ、温泉とサウナで整い、夜はロビーで生演奏のハープを聴く。「明日は朝から湖畔を走って、それからじっくり考えごとをしよう」——そんなふうに、翌日の計画に胸をふくらませて眠りにつきました。

2日目の朝に異変に気づきました。体がひどく重いのです。だるくて、眠くて、何もする気が起きません。朝食に間に合うようになんとか起きたのですが、食後はまた横になってしまい、2時間後に目を覚ましたときには、かなり強い頭痛がしていました。

いわゆる「週末頭痛」だったのだと思います。ストレスを受けているときに収縮した血管が、緊張から解放されて拡張し、それが頭痛を引き起こすというものです。つまりこの頭痛は、「あなたは今日まで、それだけ気を張って過ごしていましたよ」という、体からの答え合わせのようなものでもあります。

ロキソニンを飲んで耳栓とアイマスクをした私は、結局朝からたっぷり6時間、布団の中で眠っていました。

なぜ、こんなことになったのか。落ち着いて考えてみれば、心当たりはいくらでもありました。季節外れの風邪を3週間も引きずり、オンラインAIスクールの卒業制作に追われ、旅行の直前からは別の新しい職場でも働きはじめていました。要するに、かなり疲れていたのです。ただ——ここが今日いちばんお伝えしたいところなのですが——私自身には、その自覚がほとんどありませんでした。だからこそ、休む旅ではなく、考える旅を計画してしまったのでした。


旅には「4つのRe」がある

2日目の夜、流石に「この旅はいったい何だったのか」と考えるうち、ふと面白い考えが浮かびました。ひとくちに旅といっても、目的によっていくつかの要素に分けられそうだ、と。しかもそれが、どれも「Re(リ)」で始まる言葉で表せるのです。

旅に出る前の、いつもの自分を「100」だとして、違いを説明してみます。

リチャージ(Recharge)。擦り減った分を充電し直して、100まで戻す旅です。予定を入れず、ただただ負荷を減らし、緊張をほどく。温泉に入り、食べて寝る。今回の旅が、まさにこれでした。

リトリート(Retreat)。日常からいったん退いて、立ち止まる旅です。過去を振り返り、未来を思い描く。数字を増やすというより、「そもそも自分は、この方向のままでいいのか」を静かに問い直す。私が今回やりたかったのは、これでした。

リクリエイト(Recreate)。再創造の旅です。旅の前にはなかった何かを持ち帰る。知らない場所や初めての体験を通して、新しい出会いやアイデアを自分のものにし、100を超えて101以上の自分になる。北海道旅行は初めてだったので、これも少し期待していました。

リフレッシュ(Refresh)。気分を入れ替える旅です。友達との観光旅行や、楽しい気晴らしがこれにあたります。ただ私の場合、予定を詰め込んだ非日常はむしろ疲れて80くらいになってしまうので、旅行後に回復期間が必要です。

こうして並べてみると、自分がこれまで「旅行」とひとくくりにしていたものの中に、ずいぶん違う目的が混ざっていたことに気づきます。そして今回の私は、リトリートとリクリエイトのつもりで意気込んで出かけて、蓋を開けてみればリチャージをしていた、というわけです。


いちばん下にあるのは、リチャージ

計画通りいかなかった今回の旅行は、失敗だったのでしょうか。はじめはそう思いました。けれど、4つを眺めているうちに、そうとも言い切れないと思うようになりました。この4つには、どうやら土台の関係がありそうなのです。

4つのうち、リフレッシュだけは少し性格が違って、いわば「疲れてもいい気分転換の旅」です。残る3つ——リチャージ、リトリート、リクリエイトは、下から積み上がる縦の関係になっています。

いちばん下にあるのが、リチャージです。擦り減ったまま空っぽの状態では、立ち止まって内省するリトリートも、新しいものを生み出すリクリエイトもできません。無理にやろうとしても、疲れた頭からは、ろくな考えは出てこない。土台であるリチャージが満たされて、はじめてその上にリトリートが、そしてリクリエイトが乗ってくる。そういう順番になっているように思うのです。

そう考えると、今回の私が寝てばかりだったのは、失敗ではなかったのかもしれません。むしろ体のほうが、「あなたに今いちばん必要なのは充電だ。内省も再創造も、その後だ」と、正しく最優先事項を選んでくれた。私の意気込みよりも、体のほうが賢かった、ということなのだと思います。

実際、たっぷり眠った翌朝——旅の最終日、もう帰るという日になって、私は嘘のように元気になっていました。頭がまわり、やる気がわいてくる。「なんだ、この状態でこそ、考えごともアイデア出しもできたのに」と、少し可笑しくなりました。土台が満たされて、ようやく次の階に上がれる状態になった。けれど、そのときにはもう、帰る時間だったのです。


おわりに

今日は、私のはじめてのリトリート旅行が、ほとんど「寝るだけの旅」になった話をしました。そこから見えてきたのは、旅には4つの「Re」があること、そして内省(リトリート)も再創造(リクリエイト)も、まずは土台であるリチャージが満たされてこそ立ち上がる、ということでした。

ここまで読んで、「2泊3日で旅行なんてそうそう行けないし、自分には関係ないかな」と思われたかもしれません。でも、今日いちばんお伝えしたいのは、旅そのものの話ではありません。むしろ私は、あれだけお金をかけて遠くまで出かけて、結局いちばん効いたのが「ただ寝たこと」だったという点にこそ、大事なことが隠れている気がしています。

私たちはつい、次の休みに「何をするか」から考えます。あそこへ行こう、あれをやろう、これも片づけよう、と。でもその前に、一度だけ立ち止まって、「今の自分は、どれくらい消耗しているだろう」と見てあげてほしいのです。やっかいなことに、自分の疲れは、その日になってみないと案外わからないもの。だから、休みができたらまずはリチャージ、と割り切ってしまうと良いのかもしれません。

有意義に過ごすために予定を組むのも大切ですが、「これは絶対にやる」ではなく、「元気だったら、これができたらいいな」——それくらいに、ゆるくしておくのがいいと思います。予定外のリチャージをしても、4つの「リ」の関係を思い出せば、「今日は、あれをやるための土台をしっかり作れて良かった!」と思えるでしょう。