買い物は、心の天気予報
こんにちは、髙杉です。今日は私の日常のお話をします。
はじめに
この夏、私は一着も服を買いませんでした。
去年の服がまだ使えるから、と言い訳していました。洗濯物を畳むときによく見ると、首元は伸びてしまっているし、生地もくたびれている。なんかよくわからないシミもある。本当は買い替えどきだったのに、「買うのは面倒臭いし、まあいっか」で済ませていたのです。
それが先日、久しぶりにユニクロのオンラインショップで買い物をしました。新発売の秋服をカートに入れて、支払いのボタンを押して、届くのをちょっと楽しみに待つ。ごく当たり前のことです。でも、ふと思いました。「あれ、面倒臭いと思わなかったな」と。
同じ私なのに、買えるときと買えないときがある。この違いは、いったい何なのでしょう。
先に結論をお伝えすると、「必要なものが買えない」のは、怠けでも倹約でもなく、心が少し疲れているサインかもしれません。買い物ができるかどうかは、心のコンディションを映す、とても分かりやすいバロメーターなのではないか——今日は、そんなお話です。
ひとつだけ、先にお断りを。たくさん買える人が元気で、買わない人が不調、という単純な話ではありません。物を持たない暮らしを心地よく選んでいる方もいます。目安になるのは、量そのものではなく、いつもの自分と比べて「買う」が急に重たくなっていないか——その変化のほうです。
「買う」は、思っているより大仕事
「オンラインでの買い物なんて、ポチっとするだけ」——そう思うかもしれません。でも、心が疲れているときにやってみると、これが驚くほど重たい作業だと気づきます。
「買う」を分解すると、実は4つの力が順番に必要になります。心が元気なときは意識もしないその4つが、疲れてくると、ひとつずつ効かなくなっていくのです。順番に見ていきましょう。
① 欲しいと思う力
「こうなりたい」「これがあるといいな」という気持ちが湧いてくること。買い物は、ここから始まります。ところが心が疲れると、この「欲しい」そのものが薄れていきます。以前は楽しめていたことに興味がわかなくなる——これは、心の元気がしぼんできたときの、代表的なサインのひとつです。人間が本来持っている「もっと良くなりたい」という気持ちが薄れて、「このままでいいや」と感じるようになるのです。
② 選ぶ力
たくさんの選択肢の中から、ひとつを選び取る力。いまは、インターネットであらゆる商品にアクセスできます。便利な一方で、「どれが一番いいのか」を決めるのは、想像以上に消耗する作業です。心が疲れていると、この「選ぶ」「決める」がとても重たくなります。
実は私、服はユニクロ、しかも基本的にオンラインでしか買いません。「どこで、どのブランドで」という決断を、あらかじめ最小限まで減らしているのです。これは私なりの省エネの工夫でもあります。ところが——そこまで決断を減らしている私でさえ、疲れているときは、その最後のひと選びすら「面倒臭い」で止まってしまう。選ぶことの重さは、それくらい侮れません。
③ 自分にお金をかける力
お金を払うこと。これは単なる出費ではなくて、「自分には、これだけのお金をかける価値がある」と、自分の価値を認めることでもあります。ところが心が弱っているときは、この自己評価そのものが下がってしまいます。「自分なんかに、そこまでしなくても」という考えに邪魔されて、必要な物を前にしても、なかなか許可が出せない。擦り切れた服で我慢してしまう背景に、こうした気持ちが隠れていることがあります。
もうひとつ、お金には「不安を和らげてくれるお守り」のような側面もあります。この先どうなるか分からない——そんな漠然とした将来への不安が強くなると、手元にお金を残しておくこと自体が心の支えになり、「貯金しておいたほうがいいかも」と、必要な買い物にまで急ブレーキがかかってしまうのです。
④ 最後の一歩を踏み出す力
欲しい物が決まって、値段にも納得した。それでも、注文ボタンを押す・レジに向かうという最後のひと押しが、なぜかできない。「わかっているのに、動けない」。これは、心のエネルギーが切れかけているときに、よく起こることです。怠けているのでも、優柔不断なのでもありません。
冒頭でお話しした、あの「カートに入れて、支払いのボタンを押す」。元気なときには一瞬のこの動作が、疲れているときには、とてつもなく遠い一歩になります。先日の私が「面倒臭いと思わなかった」とふと気づいたのは、この最後のひと押しが、すっと押せたからです。
こうして並べてみると、「買えない」というのは、この4つのどこかで止まっている状態だと分かります。そして止まる場所は、その時々の心の疲れ方を、正直に映し出しているのです。
針は、逆にも振れる
ここまで「買えない」側のお話をしてきましたが、バロメーターの針は、逆に振り切れることもあります。
買うことでしか気持ちが晴れない。買った後に、決まって後悔する。気づけば、必要のない物が増えている——。こうした「買いすぎ」もまた、心が発している別のサインであることがあります。針は、どちらに振れても、そのときの心の状態を映しているかもしれないのです。
おわりに
買い物ができるかどうかは、心のバロメーター。今日は、そんなお話をしました。
もし最近、「クローゼットにくたびれた服しかないな」「買わないといけないのはわかってるけど億劫だな」と感じていたら、それはあなたが怠けているのではなく、心が少し疲れているサインなのかもしれません。どうか、そんな自分を責めないであげてください。
そのうえで、もし一歩を踏み出したくなったら——選択肢を思い切って絞ってみる(私のユニクロ作戦のように)、まずは小さな物をひとつだけ買ってみる、誰かに選んでもらう。決める負担を軽くする工夫は、いろいろあります。そして、その「買えない」状態が何週間も続いて生活がしんどいようなら、どうか一人で抱えこまずに、身近な人や専門家に声をかけてみてください。
季節は変わり、街には秋の服が並び始めました。新しい一着を選ぶ気持ちが、あなたの中に少しでも戻ってきますように。


