尿酸を下げる、今日からの一手 通風を起こす尿酸のはなし(後編)
こんにちは、髙杉です。今日は内科のお話をします。
はじめに
前回は、尿酸がどうやって体に溜まり、あの激しい痛風発作が起こるのか、その「しくみ」をお話ししました。プリン体の燃えカスである尿酸が、溶けきれずに結晶となり、免疫がそれを攻撃したときに、焼けるような痛みが起こる。そういうお話でしたね。
このようなお話をすると、外来では決まって、次のように聞かれます。「先生、しくみは分かりました。それで、結局なにをすればいいんですか?」
今日は、その問いにお答えします。水分、お酒、食事、運動、体重、そして治療とのつき合い方。暮らしの中で尿酸を下げるためにできることを、ひとつずつ、できるだけ具体的にお話しします。
はじめにお伝えしておきます。今日の内容は、読んで「なるほど」と思って終わるためのものではありません。外来で私が患者さんにお願いしていることを、そのまま書きます。痛くない今だからこそ、薬に頼らず、身軽に手を打てる時期です。ぜひ、今日から一つ、実際にやってみてください。
まず、水をしっかり飲む
いちばん簡単で、いちばん見落とされがちなのが、水分です。
前回お話ししたとおり、尿酸は血液に溶けていて、濃くなりすぎると結晶になります。ですから、水をしっかり飲んで血液を薄め、尿としてどんどん尿酸を流し出してあげることが、そのまま対策になります。
目安は、1日およそ2リットルです。汗をかく時期や運動をした日は、もう少し多いほうが良いでしょう。飲むものは、水かお茶にしてください。ここで大事な注意がひとつあります。ジュースやスポーツドリンク、甘い炭酸飲料はいけません。これらに含まれる果糖は、体の中で尿酸を増やしてしまうからです。水分補給のつもりが、かえって尿酸を上げていた、ということが起こりえます。
「では、飲めば飲むほどいいのか」というと、そこは単純ではありません。腎臓や心臓に持病があって、水分を控えるよう言われている方は、まず主治医に相談してください。それ以外の方は、こまめに水やお茶を飲む。これを今日から始めてみてください。
お酒、とくにビールはやめる
これは、はっきり言います。ビールは、やめてください。
お酒が尿酸に悪いのには、二重の理由があります。ひとつは、アルコールそのものが、体の中で尿酸が作られるのを促し、さらに尿酸を尿に捨てる働きを邪魔すること。もうひとつは、ビールがもともとプリン体を多く含むことです。つまりビールは、この両方がいっぺんにやってくる、尿酸にとって最悪の飲み物なのです。
では、お酒は一滴もだめなのか。そこまでは申しません。どうしても飲みたい方は、まずビールをやめて、プリン体をほとんど含まない蒸留酒、たとえばハイボールや焼酎に替えてください。ビールの味が好きな方は、少なくとも「プリン体ゼロ」と書かれたものを選んでください。そのうえで、量を守ることです。
守っていただきたいのは、純アルコールで1日およそ20グラムまで、という上限です。純アルコールの量は、「お酒の量(mL)×度数(%)×0.8」で計算できます。この式に当てはめると、目安はこうなります。
- ウイスキーなら60mL(ハイボールでシングル2杯ほど)
- 焼酎(25度)なら100mL
- 日本酒なら1合
そして、できれば週に2日は、お酒を飲まない日をつくってください。蒸留酒に替えても、アルコールそのものが尿酸を上げる働きは残っているからです。「ビールを我慢しているのだから、量は多くてもいい」とはならないのですね。
食事は「レバー」「干物」「魚卵」を避ける
食事の話になると、「プリン体を1日400mgまでに」という数字が有名です。ですが、多くの人は、この数字だけでは動けないと思います。目の前の食べ物に、プリン体がどれだけ入っているか分からないからです。カロリーや塩分と違って、栄養成分表示にも書いていません。
そこで、どんな食品にプリン体が多いのかを知るために、食品100gあたりのプリン体量を、いくつか挙げてみます。
とくに多いのは、レバーと干物、そして魚卵や白子です。鶏レバーはおよそ310mg、豚レバーは280mg、マイワシの干物は300mgを超えます。カツオやマイワシそのものも210mg前後、エビも多めです。これらは、少し食べただけで1日の目安に届いてしまいます。焼き鳥のレバーを何本も、あるいは干物を一枚まるごと、といった食べ方は控えてください。ビールのおつまみにレバーや白子、というのは、尿酸にとってはいちばん避けたい組み合わせです。
逆に、安心して食べていただけるものもあります。卵はほぼゼロ、牛乳やチーズもごくわずか、豆腐も100gあたり30mgほどです。とくに乳製品は、尿酸を下げる方向に働くことが分かっています。野菜も、基本的に気にしすぎる必要はありません。
つまり、プリン体の多いものを「毎日たくさん」は避け、卵・乳製品・豆腐・野菜をうまく組み合わせる。神経質に一品ずつ計算するより、この大きな方向さえ守っていただければ十分です。
運動は「軽く」がちょうどいい
体を動かすことも大切ですが、ここには一つ、意外な落とし穴があります。
尿酸を下げたいなら、ウォーキングや軽いジョギング、水泳といった、軽く息が弾む程度の有酸素運動を選んでください。1回30分ほど、週に3〜5日を目安にすると、無理なく続けられます。逆に、全力の短距離走や、限界まで追い込む筋トレのような激しい運動は、かえって尿酸値を上げてしまいます。
理由は、しくみを知ると腑に落ちます。激しい運動でエネルギーを一気に使うと、その燃えカスとして尿酸がたくさん作られます。さらに、そのとき体にたまる乳酸が、尿酸を尿に捨てる働きを邪魔してしまうのです。「健康のために」と息を切らして頑張ったのに、尿酸には逆効果、ということが起こりえます。
頑張りすぎず、少し汗ばむくらいを、毎日続ける。運動もまた、気合いより仕組みなのですね。
太り気味の方は、ゆっくり減らす
体重が多めの方、とくにお腹まわりに脂肪がついている方は、その内臓脂肪が尿酸を上げる一因になっています。減量は、尿酸対策としてとても効果的です。
ただし、ここでも急ぎは禁物です。「早く痩せよう」と食事を抜く極端なダイエットや、断食のようなやり方は、かえって尿酸値を上げてしまいます。体が飢餓状態になると、尿酸を尿に捨てる働きが邪魔されるからです。
ですから、月に1kgを目安に、ゆっくり減らしていく。ここまでお話しした、水分・お酒・食事・運動を続けていれば、体重は自然とついてきます。慌てずに、コツコツ続けることです。
自己判断で、やめない・始めない
最後に、いちばん大事なことをお伝えします。ここまでの工夫は、あくまで土台です。そのうえで、治療が必要かどうかは、必ず医師と一緒に判断してください。
前回もお話ししたとおり、一度でも痛風発作を起こしたことがある方は、多くの場合、生活の工夫だけでなく、薬でしっかり尿酸を下げる必要があります。治療中の方の目標は、尿酸値6.0mg/dL以下です。自己判断で薬をやめると、また発作を繰り返してしまいます。
そして、その裏返しも同じくらい大切です。それは、薬を「自己判断で始めない」ことです。
「しばらく薬を飲んでいなかったが、発作が出たので、慌てて残っていた薬を飲み始めた」。この対応が、かえって発作をひどくしてしまうことがあります。意外に思われるかもしれません。実は、尿酸を下げる薬を飲み始めて血液中の尿酸が急に下がると、関節に溜まっていた結晶が剥がれ落ち、かえって発作の引き金になることがあるのです。ですから尿酸を下げる薬は、発作が落ち着いてから、医師の管理のもとで少しずつ始めるのが原則です。良かれと思って自分の判断で飲み始めたり、量を増やしたりするのは、避けてください。
反対に、まだ発作を起こしたことがなく、健診で尿酸値を指摘されただけの方は、今日お話しした生活の工夫が、そのまま最良の対策になります。次のようなときは、一度ご相談ください。
- 健診で尿酸値が高いと、毎年言われている
- 足の親指の付け根や足首が、赤く腫れて熱を持ったことがある
- 以前に痛風発作を起こしたことがあるが、今は治療を中断している
おわりに
今日は、尿酸を下げるために暮らしの中でできることを、ひとつずつお話ししました。
水をしっかり飲む。ビールをやめ、飲むなら蒸留酒を量を決めて。プリン体の多いものは避け、卵・乳製品・豆腐を味方につける。運動は軽く、減量はゆっくり。そして、治療のことは自己判断せず医師と決める。この六つが、今日の骨子です。
一度に全部やろうとすると、続きません。ですが、どれか一つなら、今日から始められるはずです。まずは、コップ一杯の水からでも構いません。
前編でお話しした「しくみ」と、今日の「対策」。この二つがつながれば、あとは続けるだけです。尿酸とうまく付き合いながら、これからの季節も、美味しく元気にお過ごしください。
参考


