こんにちは、髙杉です。今日は内科のお話をします。

はじめに

「熱も喉の痛みも治ったのに、なぜか咳だけが止まらない」 
冬から春先にかけて、外来でとてもよく聞く困りごとです。
咳が続くと、
  • 何か重い病気では?
  • 抗菌薬を飲んだほうがいい?
  • いつまで様子を見ていていい?
と不安になりますよね。
実は、咳そのものは病気ではありません。 
本来、咳は異物を体の外に追い出すための防御反射です。
気道の粘膜には「異物センサー」があり、 
ホコリ、分泌物、刺激物などを察知すると、 
反射的に咳を起こして気道を守ります。
咳が2週間以上続く場合、多くのケースでは
 「異物を察知するセンサーが過敏になっている」
または
「本来そこにない刺激物が気道に流れ込んでいる」
状態が起きています。
この記事では、 長引く咳を
「気道粘膜をなにが刺激し、なぜ過敏になっているか」 
という視点から、外来でよく遭遇する5つの原因に整理します。

咳が長引く5つの原因

長引く咳の多くは、次の5つのいずれかです。
① 感冒後咳嗽(感染後の神経過敏)
② 咳喘息(炎症による過敏)
③ アトピー咳嗽(アレルギー性過敏)
④ 副鼻腔炎咳嗽(鼻汁による刺激)
⑤ GERD関連咳(胃酸による刺激)
それぞれ過敏になる理由が違うため、 
治療の考え方も異なります。

① 感冒後咳嗽―「神経が過敏なまま」残っている咳

風邪やインフルエンザが治ったあと、 
咳だけがしつこく残る状態を感冒後咳嗽と呼びます。
この咳のポイントは、 
炎症や感染はすでにほぼ治っているという点です。
感染によって一時的に傷ついた気道粘膜や感覚神経が、 
回復途中で刺激に過敏な状態になっており、 
冷たい空気や会話といった軽い刺激でも咳が出ます。

特徴

  • 風邪の後に長引く乾いた咳
  • 夜間・冷気・会話で出やすい
  • 徐々に軽快することが多い

対応

  • 多くは経過観察で自然に改善
  • 加湿、のどを冷やさない工夫
  • 鎮咳薬で対応、抗菌薬は不要

② 咳喘息―「炎症」で過敏になっている咳

咳喘息は「喘息」という名前がついていますが、 
気道は狭くなっておらず、症状は咳だけです。
原因は、気道に起きている慢性的な炎症です。 
この炎症によって、咳のスイッチが入りやすくなっています。

特徴

  • 夜間・早朝に咳が強い
  • 冷気・会話で誘発
  • ゼイゼイ、息が吐けないといった症状はない

治療

  • 吸入ステロイドが治療の中心
  • 気管支拡張薬は原則不要
  • 数週間〜数か月で改善

③ アトピー咳嗽―「アレルギー反応」で過敏になっている咳

アトピー咳嗽も「喘息」という名前がついていますが、
 喘息ではなく、アレルギーが関与した咳です。
気道が狭くなるわけではなく、 
気道粘膜がアレルギー性に過敏になり、 
軽い刺激で咳が出ます。

特徴

  • 乾いた咳
  • 喉のイガイガ感
  • アトピーや花粉症などのアレルギー体質

治療

  • 抗ヒスタミン薬が治療の中心
  • 吸入ステロイドが効くことも
  • 気管支拡張薬は無効

④ 副鼻腔炎咳嗽―「鼻水」の刺激で起こる咳

このタイプの咳は、 
肺ではなく鼻や副鼻腔が原因です。
鼻汁や後鼻漏が喉を刺激し、 
咳反射が繰り返し起こります。

特徴

  • 痰が絡む感じ
  • 朝方に咳が強い
  • 鼻症状が目立たないこともある

治療

  • 副鼻腔炎の治療
  • 鼻噴霧用ステロイドなど
  • 咳止めだけでは改善しにくい

⑤ GERD関連咳―「胃酸」の刺激で起こる咳

胃酸が食道や喉まで逆流し、 
咳のセンサーを刺激することで起こる咳です。

特徴

  • 横になると悪化
  • 食後・夜間に咳
  • 胸焼けがない場合も多い

治療

  • 就寝前の飲食を控える
  • 枕を高くする
  • 胃酸を抑える薬

【おまけ】珍しいけれど見逃してはいけない咳

ごく稀ですが、次のような病気が隠れていることがあります。
  • 心不全 
    もともと心臓が悪い、横になると咳・息切れが悪化
  • 結核  
    結核蔓延国への旅行歴、長く続く微熱と体重減少
  • 肺がん  
    喫煙歴、血痰、声のかすれ
これらが疑われる場合は、早めの受診が必要です。

おわりに

咳は、体を守るための大切な反射です。 
しかし、長引く咳では 
「守るための反射」が過剰に働いている状態が多く見られます。
大切なのは、 
「咳が出ている=感染している」と決めつけないことです。
  • 神経が過敏なのか
  • 炎症なのか
  • アレルギーなのか
  • 刺激物があるのか
原因によって、対応はまったく異なります。
咳が続いて不安なときは、 ぜひ受診してください。
「どのタイプの咳か」を一緒に整理していきましょう。