「いつもの頭痛」を悪化させないためにー薬とセルフケアの話
こんにちは、髙杉です。今日は内科のお話をします。
はじめに
前回の内科記事では、緊張型頭痛や片頭痛など、「頭痛にもいくつかのタイプがあり、人それぞれパターンがある」というお話をしました。今回は、その続きとして、「では、どう対処していくのか」という部分についてお話ししたいと思います。
頭痛というと、「とりあえず痛み止めを飲む」というイメージを持っている方も多いと思います。もちろん鎮痛薬は重要です。ただ、実際には、頭痛のタイプによって有効な対処法はかなり異なります。
また、「何の薬を飲むか」だけではなく、「どんな条件で悪化するのか」「どのタイミングで薬を使うと効きやすいのか」を把握することで、頭痛はコントロールしやすくなります。
緊張型頭痛への対処① セルフケア
緊張型頭痛は、一次性頭痛の中で最も頻度が高い頭痛です。首や肩の筋緊張、疲労、ストレス、長時間同じ姿勢でいることなどが関係しており、「頭を締め付けられるような重さ」として感じることが多くあります。
緊張型頭痛では、身体の緊張を和らげることが治療の基本になります。具体的には、
- 首や肩のストレッチ
- 長時間同じ姿勢を避ける
- 散歩や体操などの軽い運動
- 十分な睡眠
- 入浴で身体を温める
などが有効です。
特にデスクワーク中心の方では、数時間同じ姿勢を続けるだけで、首や肩の筋肉が強く緊張します。「集中すると何時間も動かない」という方では、1〜2時間ごとに立ち上がって肩や首を動かすだけでも、頭痛が軽くなることがあります。
また、シャワーだけで済ませた日より、湯船につかった日の方が頭痛が軽いという方も多くいます。お風呂で身体を温めたあと、ストレッチやマッサージをするのもお勧めです。YouTubeなどで「頭痛」と検索すると、実際のやり方を紹介した動画がたくさんヒットします。
緊張性頭痛の対処② 非薬物療法
筋緊張が強い場合には、マッサージや鍼治療などを利用するのもひとつの選択肢です。実際に、こういった治療を行っている頭痛外来もあります。
一部を挙げると、
- トリガーポイント
- 筋膜リリース
- 頸椎けん引
- バイオフィードバック
- 鍼
などがあり、これらを組み合わせることもあります。
ただし、「これをやれば頭痛が根本的に治る」というほど単純なものではありません。あくまで、「筋肉の緊張や疲労が強く関与しているタイプに有効なことがある」という位置づけで考えるのが現実的です。
緊張性頭痛の対処③ 薬物療法
つらいときには、まずは市販の鎮痛薬を使います。ただし、「朝から頭が重いから毎日飲む」「仕事の日はとりあえず飲む」という状態になると、頭痛そのものが慢性化していくことがあります。
また、病院では、筋肉の緊張が強いタイプに対して、エペリゾンなどの筋弛緩薬(筋肉の緊張を和らげる薬)を処方することもあります。特に、首や肩の張りが強く、「肩こりから頭痛が始まる」というタイプでは有効なことがあります。ただし、眠気やふらつきといった副作用が出ることもあり、また薬だけで根本的に改善するわけではありません。
薬で一時的に抑えるだけでなく、「どういう日に悪化するのか」「どんな生活パターンで頭痛が出やすいのか」を観察し、姿勢や睡眠、身体の使い方を合わせて調整することが重要です。
片頭痛への対処① セルフケア
片頭痛では、脳や三叉神経系の“過敏性”が関係しています。そのため、「どんな条件で悪化しやすいか」を把握することが、治療の重要なポイントになります。
片頭痛の代表的な誘因としては、
- 睡眠不足
- 寝過ぎ
- 空腹
- ストレス
- 気圧の変化
- 月経
などがあります。
実際、「忙しくて昼食を抜いた日」「仕事が終わって緊張が切れた休日」に頭痛が悪化する方は非常に多くいます。「ストレスが強い日」そのものより、むしろ「頑張り終わった後」に片頭痛が起きるタイプもあります。
「どんなときに悪化するのか」を把握するためには、頭痛日記が役に立ちます。頭痛が起きた時間帯だけでなく、睡眠時間、食事、月経、天気、薬を飲んだ回数などを記録し、自分の誘因や悪化パターンを分析するもので、最近は「頭痛ーる」などの頭痛記録アプリもあります。
片頭痛の薬物療法はタイミング勝負な部分があるので、「今日は悪化しやすいはず」とわかるだけでも、対処しやすさはかなり変わります。
片頭痛への対処② 市販薬
片頭痛治療の主役は薬物療法です。片頭痛でも、市販薬で十分にコントロールできることは少なくありません。
ただし、片頭痛では「何を飲むか」と同じくらい、「いつ飲むか」が重要です。「来そうだな」「少し怪しいな」という段階で鎮痛薬を使用した方が効果的で、本格的な頭痛発作が起こってから飲んでも効果は乏しいことがわかっています。
「まだ我慢できるから」と耐えているうちに、薬が効きにくい段階まで悪化してしまうのは避けたいものです。片頭痛の患者さんには、「鎮痛薬はシャツのポケットや財布の中などに入れて、とにかくすぐに飲める準備をしておいてください」とお願いしています。これだけで、ぐっと楽になる方が多いです。
片頭痛への対処③ 処方薬
病院では、「トリプタン製剤」という片頭痛専用薬を処方することができます。市販薬では改善しない方でも、トリプタン製剤で症状が大きく改善することがあります。
また、片頭痛が月4回以上ある場合や、生活への影響が大きい場合には、予防治療を検討します。以前から使われているカルシウム拮抗薬や抗てんかん薬に加えて、最近では、CGRP関連薬という、片頭痛に特化した注射薬も使用されるようになっています。
日本では、頭痛に対してはまだ自費診療ですが、慢性片頭痛に対して、ボツリヌス毒素(ボトックス)を用いた治療も行われています。頭や首周囲に少量ずつ注射し、痛みを伝える神経の過敏性を抑えることで、頭痛を起こりにくくする治療です。主に、月の大半で頭痛があるような慢性片頭痛で検討されます。
「ロキソニンが効かないから頭痛が起きたら我慢するしかない」と考えている方でも、実際には治療の選択肢はかなり増えています。
「薬を飲みすぎることで悪化する頭痛」もある
頭痛でつらい思いをしている方ほど、鎮痛薬を使う回数は増えていきます。これは自然なことであり、「意志が弱い」という話ではありません。
ただし、鎮痛薬を頻繁に使い続けることで、逆に頭痛が起こりやすくなる「薬物乱用頭痛」という状態があります。特に、月10日以上の頻回な鎮痛薬使用は、薬物乱用頭痛のリスクになります。
市販薬をほぼ毎日飲んでいる、薬が切れるとまた痛くなる、以前より頭痛の頻度が増えているといった場合には、一度治療全体を見直した方がよいことがあります。
「市販薬で何とかなるから」と受診を先延ばしにしているうちに、薬物乱用頭痛に移行してしまうケースもあります。「痛みがあるか」だけではなく、「頭痛に生活を支配され始めていないか」も、受診を考える重要な目安です。
おわりに
頭痛はとてもありふれた症状ですが、その背景や悪化パターンは人によってかなり異なります。だからこそ、「何の薬を飲むか」だけではなく、「どういう条件で悪化するのか」「どのタイミングで対処すると改善しやすいのか」を知ることが、長く付き合っていく上では重要になります。
頭痛を完全になくすことは難しくても、「以前よりコントロールできている」と感じられるようになる方は多くいます。市販薬だけでは改善しない場合や、薬を飲む回数が増えている場合には、一度相談してみてください。


