夏バテだと思っていたら熱中症?ー倒れる前に気づきたい身体のサイン
こんにちは、髙杉です。今日は、内科のお話をします。
はじめに
7月も後半に入り、いよいよ暑さが本格的になってきました。「外に長時間いたわけではないのに、仕事帰りにどっと疲れる」「食欲がない」「なんとなく調子が悪い」。この時期になると、こうした不調を「夏バテかな」と感じる方が増えてきます。
もちろん、暑さによる疲れや睡眠不足、食欲低下などが重なって、体調を崩すことはあります。ただ、その「夏バテかな?」と思っている不調の中に、実は熱中症の入口が隠れていることがあります。
熱中症というと、炎天下で突然意識を失う、救急車で運ばれる、といったイメージが強いかもしれません。しかし実際には、そこまで悪化する前に、体は小さなサインを出していることがあります。
今回は、熱中症を本格的に悪化させる前に気づくために、「夏バテ」と思いやすい体のサインについてお話しします。なお、熱中症かもしれないと思ったときの詳しい対処法や、病院を受診する目安については、次回の記事で取り上げます。
熱中症は、倒れる前から始まっている
熱中症というと、真夏の屋外で運動や作業をしていて、突然ぐったりと倒れてしまう病気、というイメージがあるかもしれません。たしかに、そのようなかたちで気づかれることもあります。
けれども、熱中症は「倒れる直前から始まる病気」ではありません。暑さによって体温調節がうまくいかなくなったり、汗をかくことで水分や塩分のバランスが崩れたりする中で、少しずつ体に負担がかかっていくところから始まっているのです。
意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が悪い、立っていられない、といった状態は、すでにかなり危険な段階です。大切なのは、そこまで進む前に「いつもの夏バテとは少し違うかもしれない」と気づくことです。
つまり、熱中症で大切なのは、倒れてから慌てて対応することだけではありません。むしろ、倒れる前の小さなサインに気づいて、早めに休むことがとても重要なのです。
夏バテに見える、熱中症のサイン
暑い時期に体がだるいと、「夏バテかな」と思う方は多いと思います。たしかに、暑さで食欲が落ちたり、寝苦しくて睡眠不足になったりすると、それだけでも体調は崩れやすくなります。
一方で、軽い熱中症の症状は、本人の感覚としては夏バテとよく似ています。しかも、最初から「これは熱中症だ」とわかりやすい症状が出るとは限りません。ここでは、熱中症の入口で見られやすいサインを、3つに分けて整理してみます。
1つ目は、全身のサインです。
なんとなくだるい、ぐったりする、食欲がない、気持ち悪い、といった症状です。「疲れているだけかな」と思いやすいのですが、体が暑さに負け始めているサインかもしれません。
2つ目は、頭や神経のサインです。
頭が痛い、やけに眠い、めまいがする、立ちくらみがする、集中できない、といった症状が出ることがあります。仕事や家事をしていても、いつもより頭が回らない、動きが遅くなる、判断が鈍る、というかたちで気づくこともあります。
3つ目は、脱水や塩分不足に関係するサインです。
尿が少ない、尿の色が濃い、足がつる、筋肉がこわばる、暑いのに汗が出にくい、といった症状です。汗を多くかいたあとや、水分が十分に取れていないときには、こうした症状が出やすくなります。
もちろん、これらの症状があれば必ず熱中症というわけではありません。感染症、貧血、低血圧、低血糖、睡眠不足、ストレスなど、ほかの原因で似た症状が出ることもあります。ただ、暑い日や湿度の高い日にこうした症状が出ている場合には、「ただの夏バテ」と決めつけず、熱中症の入口かもしれないと考えてみることが大切です。
室内でも、夜でも油断は禁物
「今日は外に出ていないから、熱中症ではないと思います」と言われることがあります。たしかに、炎天下での運動や屋外作業は、熱中症の大きなきっかけになります。
しかし、熱中症は外にいる人だけに起こるものではありません。室内でも、エアコンの効きが悪い、日差しが強い、水分が足りていない、といった条件が重なると、熱中症になることがあります。
特に注意が必要なのは、湿度が高い日です。気温だけを見るとそこまで高くないように思えても、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体の熱が逃げにくくなります。そのため、蒸し暑い日は思った以上に体に負担がかかります。
また、夜間でも油断はできません。昼間に建物が熱を溜め込んでいたり、寝室の温度や湿度が高かったりすると、寝ている間に体調を崩すことがあります。「外に出ていないから大丈夫」「夜だから大丈夫」とは言い切れないのです。
あなたの熱中症パターンは?
熱中症対策というと、「水分を取りましょう」「涼しい場所で過ごしましょう」という話になりがちです。もちろん、それはとても大切です。ただ、もう一つ大切なのは、自分がどんな場面で暑さに弱くなるのかを知っておくことです。熱中症になりやすい状況は、人によって少しずつ違います。
たとえば、睡眠不足の日に調子を崩しやすい人がいます。朝食を抜いた日にだるくなりやすい人もいます。外出中はなんとか動けていても、帰宅後にどっと疲れが出る人もいます。湿度が高い日に弱い、人混みや満員電車で気分が悪くなりやすい、運動後や入浴後にふらつきやすい、飲酒した翌日に脱水っぽくなりやすい、暑い場所で作業したあとに頭痛や吐き気が出やすい、という方もいます。
こうした「自分のパターン」に気づいておくと、早めに対策を取りやすくなります。毎年夏になると同じような体調不良をくり返している方は、「自分はどんな日に調子を崩しやすいだろう」と振り返ってみるとよいかもしれません。
熱中症対策は、暑くなってから慌てるものではありません。自分が暑さに弱くなる場面を知るところから始まります。
「暑くないから大丈夫」の一言で判断しない
熱中症は誰にでも起こりえますが、特に注意が必要な方もいます。
高齢の方は、暑さや喉の渇きを感じにくくなっていることがあります。そのため、本人が「大丈夫」と思っていても、実際には脱水や熱中症が進んでいることがあります。小さなお子さんも、体温調節が未熟で、自分で体調不良をうまく伝えられないことがあります。
また、糖尿病、腎臓病、心臓病などの持病がある方、利尿薬、降圧薬、向精神薬などを内服している方も注意が必要です。病気や薬の影響で、脱水になりやすかったり、体温調節に影響が出たりすることがあります。
こうした方は、自分では体調不良に気がつかないことも多いので、家族や周囲の人が気づいてあげることも大切です。このときに重要なのは、本人の感覚だけに頼りすぎないこと。「暑くない?」ではなく「部屋の温湿度計はどうなっている?」、「ちゃんと水を飲んでいる?」ではなく「今日は朝からコップ何杯くらい水分を飲んだ?」というように、客観的な数字で確認することが、熱中症予防につながります。
おわりに
熱中症は、重くなると命に関わることもある病気です。しかし一方で、本格的に悪化する前に気づいて対応できれば、防げることも多い病気です。「なんとなくだるい」「頭が重い」「気持ち悪い」「立ちくらみがする」といった症状を、ただの夏バテとして我慢しすぎないこと。蒸し暑い日には、まず熱中症の入口かもしれないと考えてみることが大切です。
今年の夏は、「自分はどんな日に暑さに負けやすいのか」を少し観察してみてください。寝不足の日なのか、朝食を抜いた日なのか、湿度が高い日なのか、外出後なのか。自分のパターンに気づけると、倒れる前に休む、予定を調整する、涼しい環境を整える、という行動につなげやすくなります。
次回は、「熱中症かも」と思ったときに自宅でできる対処法と、病院を受診した方がよいサインについてお話しします。


