こんにちは、髙杉です。今日は、内科のお話をします。

はじめに

2026/02/21の記事では、花粉症の薬の選び方についてお話ししました。抗ヒスタミン薬や点鼻薬、点眼薬をうまく使うことで、多くの方は症状をコントロールすることができます。
 
ただ、「薬を飲んでもつらい」「毎年薬に頼り続けるのがしんどい」と感じている方も少なくありません。実際、これまでご紹介した治療は、いずれも症状を抑えるための“対症療法”です。
 
では、花粉症そのものを改善する方法はないのでしょうか。今回は、体質そのものにアプローチする治療、舌下免疫療法について解説します。

舌下免疫療法とは

■ どんな治療? 
舌下免疫療法は、アレルギーの原因となる物質を少量ずつ体に取り込み、体を慣らしていく治療です。舌の下に薬を入れて毎日継続することで、アレルギー反応そのものを起こしにくくしていきます。
 
■ どれくらい効く? 
舌下免疫療法を行うことで、症状が30%ほど軽くなり、薬を使う量も30%ほど減らすことができるとされています。治療を受けた90%の人が効果を感じていますが、効果を実感できない人もいるようです。
 
つまり、例年よりもかなり楽になったと感じる人が多くいる一方で、すべての人に効くわけではなく、症状をゼロにできるとは限らないということです。症状が強い人ほど、変化を感じやすい傾向があります。
 
■ 効果はいつから?どれくらいもつ? 
効果はすぐには出ません。数か月〜1年で変化を感じ始め、しっかりした効果を得るには2〜3年の継続が必要です。
 
3年以上継続すると、治療終了後も年単位で効果が持続することが報告されています。新しい治療なので長期間の追跡データはなく、効果が一生続くかどうかはまだわかっていません。
 
■ 適応となるアレルギー
スギ花粉症に対する「シダキュア」と、ダニアレルギーに対する「ミティキュア」があります。併用も可能です。ヒノキやブタクサなど、スギ以外の花粉症に対する舌下免疫療法は、残念ながらいまのところありません。

舌下免疫療法の仕組み

花粉症は、身体の免疫が花粉に過剰反応してしまうことで起こります。本来なら「そこまで危険ではない」と処理できる相手を、免疫が「敵だ」と誤って認識してしまうのです。
 
舌下免疫療法は、この反応のしかたを少しずつ変えていく治療です。スギやダニの成分を毎日少量ずつ体に取り込むことで、免疫に「これは過剰に攻撃しなくてよい相手だ」と再教育していきます。
 
似た治療として、食物アレルギーのある子どもが、少しずつ食べて慣らしていく「経口免疫療法」があります。少量を繰り返し体に見せることで、免疫の「敵認定」がだんだん弱まり、症状が起こりにくくなっていきます。
 
この治療で大切なのは、薬をただ飲み込むのではなく、舌の下でしっかり保持することです。舌の下の粘膜には、アレルゲンを取り込んで免疫に伝える細胞が多く、ここでアレルゲンを接触させることで効率よく免疫の教育が行われます。
 
つまり舌下免疫療法は、症状をその場で抑える薬ではなく、免疫システムの花粉に対する認識と反応そのものを時間をかけて変えていく治療なのです。

デメリット

■ 用法が少し面倒 
舌の下に薬を入れて、飲み込まずに1分間キープし、その後5分間は飲食を控えます。シンプルですが、毎日続けるとなると意外と手間に感じる方もいます。
 
■ 月1回の受診が必要 
定期的な経過確認が必要なため、月1回の通院が前提になります。忙しい方にとっては負担に感じやすいポイントです。
 
■ 長期間の治療 
この治療は短期間では終わりません。基本は2〜3年以上の継続が必要です。引っ越しなどを予定している場合は、引っ越し先でも治療を継続できるか確認しておきましょう。
 
■ 副作用 
治療開始直後は、口の中のかゆみや違和感などの軽いアレルギー症状が比較的よく見られます。重篤な副作用はまれですが、ゼロではないため、初回は医療機関で観察しながらの内服が必要です。

治療の実際

■ どうやって始める?
シダキュアは花粉の症状が出ていない時期に開始します。ミティキュアはいつでも始められます。
 
まずは、アレルギー症状がスギやダニによるものであることを確認するために、診察と血液検査を行います。結果は1週間ほどでわかります。
 
初回は院内で内服し、安全を確認します。その後は月1回の受診で処方を続けながら、長期的に治療していきます。
 
■ 費用はどのくらい? 
保険適用で、月あたり数千円程度です。長期間の治療にはなりますが、比較的続けやすい価格になっています。

おわりに

舌下免疫療法は、「数年かけて体質を変える」治療です。毎日の内服や通院といった負担はありますが、その分、将来的に花粉症のつらさを大きく減らせる可能性があります。
 
特におすすめなのは、毎年花粉症の症状が強く出て、薬を使っても十分に抑えきれない方です。眠気などの副作用で薬が使いにくい方や、この先も毎年花粉症に悩まされるのがつらいと感じている方にとっては、前向きに検討する価値のある治療だと思います。
 
当院でも処方を行っておりますので、興味のある方はぜひ一度ご相談ください。