ACT実践ガイド①呼吸瞑想
こんにちは、髙杉です。今日は、心療内科のお話をします。
はじめに
前回までの記事では、
アクセプタンスのステップを説明してきました。
ここからは、実際にアクセプタンスを体験するための
具体的なエクササイズを紹介していきたいと思います。
ACTのスキルには、とてもたくさんの種類があります。
今回は、特に基本的で、日常でも使いやすい
「呼吸瞑想」の練習を一緒にやっていきましょう。
⓪ エクササイズを始める前に
「瞑想」という言葉を聞いて、
みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。
・ 無にならなければいけない
・ リラックスしなければいけない
・ 雑念を消さなければいけない
そんなふうに思われがちですが、
今日やる瞑想はどれにも当てはまりません。
ACTの呼吸瞑想を通して身につけたいのは、
“雑念を消すスキル”ではなく、
“雑念をそのままにして呼吸に戻るスキル”です。
では、記事を読みながら、実際にやってみましょう。
① 瞑想の姿勢を整える
椅子に浅く腰掛け、足の裏を床につけます。
両手を頭の上で組んで、天井に向かって伸びをしたら、
背筋を伸ばしたまま手は太ももに優しく下ろします。
目は閉じてもいいし、薄く開けたままでも構いません。
数回深呼吸したら、自然な呼吸に戻します。
② 呼吸を観察する
毎日あたりまえのように繰り返している呼吸ですが、
初めて見るもののように、好奇心をもって観察してみましょう。
息を吸うとき、鼻の穴にはどんな感覚があるでしょうか。
吸った空気は、身体のどこを通ってどこへ行くのでしょう。
胸やおなかはどんなふうに動いていますか?
吐くとき、唇に触れる空気の湿り気に気づくかもしれません。
「観察」は、「評価」や「分析」とは違います。
この呼吸は浅すぎるんじゃないかな。
もっとゆっくり吐かないとダメなはず。
どうして胸にしか息が入らないんだろう。
そういう気持ちはいったん脇に置いて、
ただ優しく見つめながら、
起こっていることに気づいていくだけです。
読み進める前に、ここから5呼吸、観察を続けましょう。
③ 呼吸から意識が逸れたことに気づく
そうやって呼吸に意識を向けつづけようとしていると、
必ず邪魔が入ります。いわゆる「雑念」というやつです。
「これで合っているのかな」
「こんなことやっても本当に意味があるのかな」
瞑想をやめさせようとする声が聞こえるかもしれません。
「昨日あんなこと言っちゃったけど、失敗だったなぁ」
「今日は苦手な上司と会議がある。準備不足かも」
過去の記憶や未来の想像が頭を駆け巡るかもしれません。
呼吸の観察はどこへやら、
いつのまにか考えごとや空想に没頭しはじめてしまいます。
これは瞑想の失敗ではありません。
誰にでも必ず起こることです。
大切なのは、
「いま呼吸から意識が逸れて、雑念に引っ張られたな」
というふうに、逸れたことに気づくこと。
いったん気づけば、そこから抜けだす選択肢が手に入ります。
④ 雑念を観察して、名前をつけてみる
なにが自分を呼吸から引っ張ったのか、
少し離れたところから雑念の正体を眺めてみましょう。
これは、「うまく瞑想できていないんじゃないか」という心配。
これは、昨日上司に怒られたときの上司の声と表情。
これは、「自分の将来は絶望的だ」という考え。
こんなふうに、
自分を引っ張りあげたものに短い言葉で名前をつけてみましょう。
時間をかけて入念に眺めすぎると、また巻き込まれてしまうので、
手短にやるのがポイントです。
⑤ 雑念が浮かぶことを優しく許す
最初に述べたように、これは雑念を消すスキルではありません。
しかし、瞑想中に雑念が浮かぶと、どうしても
「また呼吸から意識が逸れちゃった。上手くできていない」
「すぐに意識が逸れてしまう。自分はダメなんだ」
というように、自分を責めてしまいがち。
そうではなくて、
「私にとって大切なことだから、繰り返し頭に浮かぶんだな」
「何度も思い出すのは、失敗から学ぼうとする頑張りなのかも」
「準備不足を教えてくれているんだね、ありがとう」
というように、
雑念が浮かぶこと、そのままそこにあることを、
優しい気持ちで許してあげましょう。
⑥ そして、呼吸に戻る
逆説的ですが、そうやって優しい気持ちで許してあげることで、
雑念への執着を手放すことができるようになります。
そっと意識を雑念から離したら、
また②でやった「呼吸の観察」に戻ってきます。
また雑念に引っ張り上げられたら、
また呼吸の観察に戻ります。
100回逸れても、100回戻ればOK。
これを5分間ほど続けてみましょう。
⑦ 最後に周りを囲む世界に戻ってくる
呼吸瞑想をしているあいだ、
私たちの意識は自分の内側に向かっています。
瞑想が終わったら、
外側の世界とのつながりを取り戻しましょう。
2-3回深呼吸をして、息を吐きながらゆっくり目を開け、
目に見えているものや聞こえてくる音を確認します。
軽く手足を動かして、身体の感覚にも意識を広げます。
これで、呼吸瞑想はおしまいです。お疲れさまでした!
おわりに
いかがでしたか。
今回はかなり丁寧にやるバージョンで紹介しましたが、
「②呼吸を観察する」
「③意識が逸れたことに気づく」
「⑥呼吸に戻る」
この3ステップだけでも大丈夫。
他のステップは、この3ステップを助けるためのものなので、
省略しても構いません。
これを毎日、できれば朝と夜に5分ずつやるのがお勧めです。
最初はうまくできなくても、
繰り返すうちにスムーズにできるようになります。
次回以降もこのような、ACTのスキルエクササイズの実践を扱う予定です。
まずは呼吸瞑想を3週間、じっくり練習してみてください。


