最近、食欲がありません。病院に行った方がいいですか?
こんにちは、髙杉です。今日は内科のお話をします。
はじめに
「最近なんとなく食欲がない」
これは外来でもよく聞くご相談です。食欲不振というと、「胃が悪いのかな?」と思う方が多いのですが、実際には胃や腸だけが原因とは限りません。疲労やストレスのような一時的なものから、全身の病気が隠れている場合まで、原因はさまざまです。一方で、「食欲がない=すぐに病院へ行かなければならない」というわけでもありません。
今回は、食欲不振が起きる仕組みや原因、どのような場合に受診を考えた方がよいのかについてお話ししたいと思います。
食欲がないこと自体は珍しいことではない
まず知っていただきたいのは、一時的な食欲不振は決して珍しい症状ではないということです。
私たちは「お腹が空くのは胃の仕事」と思いがちですが、実際には食欲をコントロールしているのは脳です。脳には食欲を調整する仕組みがあり、睡眠不足や疲労、ストレスなどの影響を受けています。そのため、睡眠不足、疲労、ストレス、風邪のひき始め、季節の変化などでも、食欲は簡単に低下します。
「大事な試験や面接の前は食欲がなくなる」「忙しい時期になると食事量が減る」という経験がある方も多いのではないでしょうか。また、「緊張するとお腹が痛くなる」という現象もよく知られています。これは脳と消化管が密接につながっているためです。
数日程度の食欲不振で、
・水分は取れている
・少量でも食事はできている
・少しずつでも改善している
という場合には、まずは十分な休養を取りながら様子を見ることも大切です。
ただし、ここでひとつ重要なポイントがあります。実は、医師が食欲不振そのものよりも気にしているのは、「体重が減っているかどうか」です。同じように食欲がなくても、体重がほとんど変わらない方と、1か月で3kg体重が減っている方では、診察での考え方は大きく変わります。
食欲不振が長引く場合や、気付かないうちに体重が減っている場合には、一度原因を調べた方がよいことがあります。では、実際にはどのような原因があるのでしょうか。
①胃腸の病気による食欲不振
まず最初に考えるのは、胃や腸の病気です。例えば、胃腸炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃がんなどがあります。こうした病気では、胃の痛み、胸やけ、吐き気、腹痛、下痢などを伴うことが多いです。
病院では、まず症状の経過や食事との関係を詳しくうかがいます。その上で、必要に応じて血液検査や胃カメラなどの検査を検討します。治療は原因によって異なりますが、胃酸を抑える薬や整腸剤などを使用することがあります。
ただし、食欲不振の原因は胃腸だけとは限りません。胃の検査をしても異常が見つからない方も少なくないのです。
②ストレスやこころの不調による食欲不振
食欲不振の原因として意外に多いのが、ストレスやこころの不調です。
先ほどお話ししたように、食欲は脳によってコントロールされています。そのため、こころの状態は食欲に大きな影響を与えます。例えば、強いストレス、適応障害、うつ病、不安障害などでは、食欲不振がよくみられます。「胃の検査では異常がない」「朝だけ食欲が出ない」「気分の落ち込みや意欲低下もある」といった場合には、こころの不調が関係していることもあります。
また、胃腸の病気では「食べるとつらい」という訴えが多いのに対し、ストレスが原因の場合は「食べ始めれば意外と食べられる」というケースもあります。もちろん、これだけで原因を判断できるわけではありませんが、診察ではこうした違いも参考にしています。
病院では生活状況やストレスの状況についてもお話をうかがいます。また、身体の病気が隠れていないことを確認するために、血液検査などを行うこともあります。治療は休養や生活環境の調整が基本になりますが、必要に応じて薬物療法や心理的なサポートを行うこともあります。
そしてもうひとつ、見落としてはいけない原因があります。それが、胃以外の身体の病気です。
胃以外の病気が隠れていることもある
意外に思われるかもしれませんが、胃以外の病気でも食欲不振は起こります。
例えば、貧血、糖尿病、甲状腺疾患、感染症、慢性腎臓病などです。こうした病気では、疲れやすい、動悸がする、発熱が続く、体重が減るといった症状が手がかりになることがあります。患者さん自身は「胃の調子が悪いだけ」と思っていても、実際には全く別の病気が見つかることもあります。「食欲がないだけで病院に行っていいのかな」と心配される方もいますが、食欲不振は内科でよく診る症状のひとつです。
一般内科では、まず血液検査を行うことが多く、貧血、炎症反応、肝機能、腎機能、血糖値、甲状腺機能などを確認します。食欲不振というひとつの症状から、思いがけない病気が見つかることもあります。原因となっている病気を治療することで、食欲も改善していくことが多いです。
こんなときは受診をおすすめします
食欲不振はよくある症状ですが、次のような場合には受診を検討した方がよいでしょう。
- 数週間以上続いている
- 体重が減ってきている
- 発熱がある
- 強いだるさがある
- 水分が十分に取れない
特に、「食欲がない」と「体重が減っている」が同時にみられる場合には、一度しっかり原因を調べることをお勧めします。
おわりに
食欲は、身体の状態だけでなく、疲れやストレスの影響も受ける、とても繊細な機能です。そのため、「食欲がない=重大な病気」と考える必要はありません。実際には、疲労やストレス、風邪などによる一時的な変化であることも少なくありません。
一方で、長引く、体重も減る、発熱や強いだるさを伴うといった場合には、身体からのサインである可能性があります。「気合いで食べなければ」と無理をするよりも、「なぜ食べられないのだろう」と原因に目を向けることが大切です。
また、食欲不振の原因は胃腸の病気だけではありません。ストレスやこころの不調、さらには全身の病気が関係していることもあります。「食欲がないだけだから」と我慢していた症状の背景に、治療が必要な病気が隠れていることもあります。気になる症状が続く場合は、ぜひ一度ご相談ください。


