こんにちは、髙杉です。今日は、私の日常のお話をします。

はじめに

 Apple Watchをご存じですか。診察中に私の白衣の手元から覗いているのに、気づいておられる方もおられるかもしれませんね。私はこのApple Watchを、お風呂と洗顔のとき以外ずっと、寝るときも身につけています。文字盤は、必要な情報を一度に8つ並べられるインフォグラフ。手首の上に頼れる司令室を持ち歩いているような感覚で、とても気に入っています。
 ところで、みなさんはスマートウォッチにどんな印象を持っているでしょうか。「便利そうだけど、なんとなく面倒そう」 「スマホで十分じゃない?」 そんなふうに、少し距離を置いている方も多いかもしれません。でも実は、健康上の不安やちょっとした生きづらさを抱える人の毎日に寄り添い、そっと支えてくれる相棒なんです。使い慣れると、「ないと困るインフラ」のような存在になります。この記事では、私が日々使っていて特に役立っている活用法を、①通知 ②記録 ③計測 ④計測+通知の4つにわけて紹介していきます。

1.通知 ― 行動の切り替えを助ける、優しい“合図”たち

 Apple Watchを使い始めてまず感じたのは、行動の切り替えがスムーズになるということでした。ADHDの特性もあり、「次になにをすればいいか」「いつ動き出すべきか」を忘れがちな私にとって、Watchの通知は「手首からのさりげない声かけ」のような存在です。
 スケジュールアプリ(ストラクチャーなど)に予定を分単位で登録しておけば、通知が「あと10分で家を出るよ」 「あと5分で作業を区切ろう」といった形で、自然と行動の背中を押してくれます。タイマーも日常の必需品です。洗濯機が鳴ったのに料理中で動けないときや、お湯を沸かしているあいだ少しだけSNSを覗きたいときなど、手首に向かって「ヘイSiri、タイマー10分後!」と声をかけます。わざわざスマホを取り出して触る必要がなく、手が汚れていても、文字どおり手が離せない状況でも、声だけで操作できるのが本当に便利です。うっかりを防ぐ最大のポイントは、未来の自分を一切信用しないこと。これを徹底してから、「洗濯槽で生乾きになった洗濯物」や「ほとんど蒸発しきった鍋」を発見する回数が激減しました。 その日のうちにやればいいタスクは、リマインダーで定期的に通知。バナナを買う、メールを返す、学会費を振り込む……こうした細かい用事は「1日に何度も思い出させてもらう」くらいがちょうどいいのです。
 そして何より、Apple Watchからの通知は静かでやさしい。スマホのアラームのように心臓が飛び出しそうな音は鳴らず、自分にだけわかるように、手首でトントンと知らせてくれる。ストレスが少なく、作業の邪魔にならないところが本当にありがたい点です。

2.記録 ― “面倒”を限りなく小さくすると、生活は整いはじめる

 健康管理のために記録は大事だと分かっていても、面倒で続かない。よし記録するぞ、とスマホを開いた瞬間、SNSに吸い込まれてしまう。そんな経験はありませんか。その点、Apple Watchは「記録するまでの面倒と誘惑」をほぼゼロにしてくれます
 例えば、月経や便通の記録。トイレの中で「いま記録しておこう」と思った瞬間に、数秒で入力できます。これをスマホでやることを想像してみてください。トイレから出て手を洗って、スマホを探してロックを解除、記録アプリを見つけ出してやっと記録。こんな面倒なことが続くはずがありません。そもそもトイレを出た瞬間に、記録のことは頭から抜け落ちてしまいます。記録を続けられるかは、「アクセスのしやすさ」で決まるのです。薬を飲んだら手元で記録。水を飲んだら手元で記録。Apple Watchは、生活改善のハードルをぐっと下げてくれるのです。

3.計測 ― 自分を知ることが、改善のいちばんの近道

 とっても几帳面な人であれば、〈記録〉だけならスマホでもできるかもしれません。でも、Apple Watchにしかできないことがあります。それが〈計測〉です。ひとつは環境の計測、もうひとつは身体の計測。特に身体の計測は、ずっと肌につけているWatchだからこそできることです。
 私は感覚過敏があり、気候のわずかな変化をとても不快に感じたり、体調が悪くなったりします。そんなときはすぐに手元を確認。気温、湿度、風速、紫外線量…自分の不快感と数字が結びつくので、翌日の服装や行動を調整する手掛かりが得られます。ひとつだけ残念なことに、Apple Watchには室内の温度や湿度を測定する機能はないので、私はストラップ型の小さな温湿度計も持ち歩いています。例えばレストランの中が暑すぎるとき、「そう感じているのは自分だけかも」と思うと我慢してしまいますよね。室温が26℃だとわかれば、店員さんにお願いする勇気も湧いてくるというものです。
 Apple Watchをつけて寝るだけで、睡眠の状態も詳しく計測してくれます。日中の行動が夜の眠りにどうつながるかが分かると、どうすれば睡眠の質を上げられるかが見えてきます。睡眠の質が悪かった翌日は、カフェインを控えたり、散歩を増やしたりと、過ごし方を修正することもできます。活動量も、自分の体重や年齢に合わせて正確に記録されます。活動が少ないと「いまからでも時間はあるよ」と文字通り突っついてくれるので、「今日は一駅手前で降りて歩こう」といった小さな調整がしやすくなります。逆に、早い時刻からしっかり動くと、ブブッと震えて褒めてくれるので、それもモチベーションになります。 
 「計測できるものは改善できる」――ドラッカーの有名な言葉が、手首の上で毎日実感できます。

4.計測+通知 ― “気づけない変化”を察知して、その場で行動を変える

 そしてApple Watchの真骨頂は、自分では気づけない変化を拾って、その場で行動までつなげてくれるところです。
 気圧の急降下は片頭痛発作の引き金になります。片頭痛のコントロールは、いかに早い段階で薬を飲むかにかかっていますが、予兆があっても薬や水をすぐに用意できず、タイミングを逃してしまうことがありますよね。Apple Watchの「気圧急降下通知」をオンにしておけば、予兆を感じるよりも早く発作を予測し、対処することが可能になります。
 HRV(心拍変動)の通知もとても役立ちます。HRVとは、心拍の“ゆらぎ”を数値化したもので、自律神経のバランスを反映します。数値が高いほど心に余裕があり、低いほどストレスや疲労が蓄積している状態です。 ストレスはリアルタイムでは意外と自覚しにくいもので、「疲れていることに気づいたときにはもう限界」ということも珍しくありません。HRV通知のおかげで、自分のストレスレベルが上がっていることに気づき、深呼吸をしたり、ストレッチを挟んだり、短い休憩を取ったりと、リアルタイムで調整できるようになります。「運動しているときは意外とリラックスしている」「SNSを眺めているときは実はストレスが上がっている」など、自覚とのズレにも気づくので、時間の使い方を考えるきっかけにもなります。
 最近話題のセデンタリー行動(長時間の座位行動)を減らす機能もあります。セデンタリー行動とは、座ったり横になった姿勢でほとんど体を動かさない時間のことです。長く続くほど代謝が落ち、寿命が短くなることが分かっています。座り続けていると突っついてくるスタンド通知は、過集中でパソコン作業を続けがちな私には欠かせません。通知がきたらすぐに立ち上がる。どうしても無理ならタイマーをセットする。
 手洗いの自動計測も、小さな機能ですが優秀です。忙しいとつい短くなりがちな手洗いは、15秒のお知らせが来るのを待って自分と患者さんの健康を守ります。途中でやめると、「惜しい!あと少し!」と応援してくれるのも面白いところです。逆に、潔癖傾向が強い方には「ここで終わっていいんだ」という安心材料になるかもしれません。

終わりに

 ここまであれこれ紹介してきましたが、実を言うと……私がApple Watchでいちばん使っている機能は「iPhoneを探す」ボタンです。私のiPhoneにはどうやら脚が生えているようで、気づけばどこかへ旅に出ています。布団の隙間、電子レンジの上、洗濯カゴの中。記憶にない場所から見つかるので、自力で探すのは絶対に無理です。そんなときでもAppleWatchのボタンを押せば、iPhoneが全力で「ここだよ!」と叫んでくれる。この機能ひとつだけでも、私には十分価値があります。
 実はApple Watchは耐水性が高く、丸洗いできて衛生的。ケースやバンド、文字盤を替えれば雰囲気も自在に変えられ、自分らしさも表現できます。みなさんも、この可愛くて心強い相棒との生活を、ぜひ一度検討してみてください。